スタッフ
監督:ルイジ・ザンパ
製作:ディノ・デ・ラウレンティス、カルロ・ポンティ
脚本:アルベルト・モラヴィア、G・バッサーニ 他
撮影:エンツォ・セラフィン
音楽:エンツォ・マゼッティ
キャスト
アドリアーナ / ジーナ・ロロブリジーダ
ディオダーティ / ダニエル・ジュラン
モリナーリ / フランコ・ファブリツィ
アスタリータ / レイモン・ペルグラン
アドリアーナの母親 / ピーナ・ピオヴァーニ
ソンゾーニョ / レナート・トンティーニ
リッカルド / ジーノ・ブッザンカ
トンマーソ / マリアーノ・ボッティーノ
トゥーリオ / マリオ・アッドバッティ
日本公開: 1955年
製作国: イタリア ミネルヴァ・フィルム作品
配給: イタリフィルム、NCC
あらすじとコメント
ローマを舞台にした作品。今回は直接戦争とは関係ないが、古今東西貧しいが美女だと解りやすい化学反応が起きると描く悲痛なドラマ。
イタリア、ローマ
ドイツでヒトラー率いるナチス政権が誕生した2年後の1935年、イタリアでもファシスト政権が幅を利かせていた。
19歳になるアドリアーナ(クラウディア・カルディナーレ)は、政治情勢など興味がなく、貧しいながらも母親と二人暮らしをしていた。
その母親は娘を何とかモデルとして大成させ、少しはラクな生活がしたいと願っている。それは自分も元モデルだったから。しかし、そんな簡単には行かずアドリアーナは画家の全裸モデルとして生計を立てていた。
彼女は毎日満員バスでアトリエに向うが、バス停近くにいつも高級車が停まっていることは認識していた。どうやら中にいる男は自分に興味があるらしいと感付いているが無視していた。
ある朝、バスに乗り遅れると、すかさず送ってあげると高級車の男が声を掛けてきた。戸惑うが、結局誘いに乗ってしまう。彼はモリナーリ(フランコ・ファブリッィ)だと名乗るが・・・
とある美女の転落と薄幸さを描く重苦しい人間ドラマ。
貧しいが美人の19歳。抑圧的な母親と二人暮らしで上昇志向を強制されている。
だが本人は保守的であり、当然、異性経験などは一切ない。
現実とのジレンマがあり、遂にナンパされた相手と結婚の約束をし関係を持ってしまう。しかも高級車の持ち主ではなく、運転手と知っての上だ。
母親への反抗でもある。ところが相手は情事にしか興味がなく結婚に関しては常にはぐらかすので、観客はすぐにピンとくる。
それを知ったヌードモデルの仲間は割り切って金になれば権力家や家族持ちにも平然となびくタイプゆえに、内務省高官との愛人話を持ち掛けてくる始末。
そこからあれよあれよと次々と問題男性ばかりと関係が続き、転落していく内容。
市井の等身大的人間の悲劇性を描くことが多い「ネオ・リアリズム」映画の一作でもある。
いかにもラテン系の身勝手な欲望を男として当然とばかりに振りかざし篭絡していく。ヒロインは無知と弱さから流されていく。
その双方ともが絶望的な結末を迎えて行く展開で、党の高官から犯罪者、左翼活動家と、よくもまあ分かり切った相手にばかり翻弄されていくなと思うし、母親もどこか自分の失敗した人生をなぞるように歩む娘に的確なことを言えないジレンマが漂う。
白黒画面で当時の趨勢を寂れた裏町やボロアパートを背景に描いて行き、どこか明るい方向に着地して行けるのかと不安になる進行。
主演のカルディナーレは力演で、妙に迫力のある痴呆さを醸し興味深い。散々苦労した挙句、ラストはそれでも前向きに歩んでいこうとするヒロインなのでひと筋の光明を感じさせるのだが、ちょっと待った。
描かれた時代背景は、その数年後に負け戦になる第二次大戦が勃発するのだと思うと、何ともやるせない気持ちにさせられる。
