喜劇 とんかつ一代   昭和38年(1963年)

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スタッフ
監督:川島雄三
製作:佐藤一郎、椎野英之
脚本:柳沢類寿
撮影:岡崎宏三
音楽:松井八郎

キャスト
五井久作 / 森繁久彌
田巻伝次 / 加東大介
田巻伸一 / フランキー堺
五井柿江 / 淡島千景
秀山とり子 / 団令子
遠山復二 / 三木のり平
秀山仙太郎 / 山茶花究
衣笠大陸 / 益田喜頓
遠山琴江 / 池内淳子
芸者りんご / 水谷良重

製作国: 日本 東京映画
配給: 東宝


あらすじとコメント

東京の下町に実在する名店をモデルにした人情喜劇。いかにも明朗快活な筋運びの安定作。

東京、上野

かつてはフランス料理の凄腕コックだった五井久作(森繁久彌)は上野本牧町に「とんQ」というとんかつ店をだした。

かつての親方で、行く行くは久作に継がせようとしていた「青龍軒」コック長の田巻伝次(加東大介)は妹と結婚までさせたのにと怒り心頭で、今や絶縁状態である。

そんな伝次の息子伸一(フランキー堺)は、そろそろ自分が継ごうと考えるが、老舗ゆえに頑固な料理人の父の踏襲よりも現代風に変えたいと思っている。

当然それも面白くない伝次だったが・・・

師弟関係の料理人と取り巻きたちを描く明朗喜劇。

高級フランス料理からすれば「とんかつ」は庶民の食べ物で完全格下。

何故、そんな店を出したのか謎だと思う師匠。当然主人公には秘めた思いがあるという内容で、それぞれの家族や親族が複雑に絡みながら、ある程度のてんやわんやが描かれていく。

ストーリィは当時のいかにもの内容で出演陣も東宝喜劇の常連ばかり。作品によって役どころが入れ替わる程度なので、どの映画か混乱することも多々ある。

本作も然りではあるし、しかもこの役者同士で年齢が妙に近いのに「親子」とか、何ら似ているところがないのに「兄妹」を演じさせるのには無理があるとも感じた。

ただし、それでもそれなりに見えるように演技するから当時の役者は大したものだ。

そんな俳優たちを捌き、少し個性を発揮させる演出は川島雄三で安定しており、流石。

現在では認知度が上がった「クロレラ」が本作ではとても怪しい食材として登場し来て笑いを誘うが、結果的に開発者の自称科学者がアメリカのNASAに招聘されるというオチも興味深い。

しかも本作で登場する「とんQ」と「青龍軒」は今でも実在するとんかつの「井泉」と「上野精養軒」であり、本作でもラストで新築披露される精養軒の建物は現在でも上野公園内に建っている。

映画では完全なセットの井泉の方も実店舗の面影を残しており、どちらも本作を観て今行くと、また別な楽しみ方もできよう。

主役の森繁が唄う主題歌の歌詞も絶妙で、ヘンな面白さがある。「とんかつの油のような接吻を」とか「とんかつが食えなくなったら死んでしまいたい」などと歌うのだ。

とんかつ大好きな自分としては、つい口ずさみそうで苦笑してしまった。

他の出演者たちも芸達者で笑いの『間』とか、座敷での宴会芸の軽妙さなど、現在の俳優たちでは完全に無理だと思わせる余裕も画面越しに感じさせて羨ましい限り。

ロケでの上野動物園や湯島天神に通じる路地など、街の変化も別な意味で心に響く。

作品の優秀度よりも、時代性を懐かしむ類の映画でもあるが、それでも当時としては及第点を献上できる作品。

余談雑談+ 2026年1月11日
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