ピーター・セラーズのマ☆ウ☆ス(未) – THE MOUSE THAT ROARED(1959年)

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スタッフ
監督:ジャック・アーノルド
製作:ウォルター・シェンソン、ジョン・ペニントン
脚本:ロジャー・マクドゥーガル、スタンリー・マン
撮影:ジョン・ウィルコックス
音楽:エドウィン・アストリー

キャスト
バスコム / ピーター・セラーズ
ルパート首相 / ピーター・セラーズ
女王グロリアナ12世 / ピーター・セラーズ
ヘレン / ジーン・セバーグ
コーキンツ博士 / デヴィッド・コソフ
コブリー / モンティ・ランディス
バックリー / ウィリアム・ハートネル
ベンター / レオ・マッカーン
スニペット将軍 / マクドナルド・パーク

日本公開: 未公開
製作国: イギリス カール・フォアマン作品
配給: なし


あらすじとコメント

ピーター・セラーズの未公開作で続ける。傑作「博士の異常な愛情」(1964)は本作にインスパイアされたのではと思わずニンマリしてしまう、何ともブラックでシュールなコメディの良作。

大フェンウィック公国名前にこそ『大』が付いているが、フレンチアルプス山脈にひっそりとある小さな国。主要産物はワインで、それをアメリカへ輸出して国家を運営している。

ところがアメリカ国内で安価な模造品が作られ、一挙に輸出が激減してしまった。慌てた首相のルパート伯爵(ピーター・セラーズ)は、アメリカへ宣戦布告すると議会で宣言。女王や与野党全議員も慌てるが、それはあくまでも策略で、すぐに降伏してしまえば、アメリカは復興などで手厚い資金援助など厚遇をするはずだと。そこで森林警備官で軍最高司令官でもあるバスコム(ピーター・セラーズ)に20名ほど連れてニュー・ヨークに行き、すぐに降伏しろとの命令が下った。

大西洋を横断し、いよいよNYへ入港というとき、何だか様子がおかしいことに気付く。誰一人いないのだ。それは最新式の小型爆弾開発成功により、いざという時のために全市に避難訓練命令がでていたから。

そんなこととは露知らずバスコムらは上陸するが道に迷い、新式爆弾を開発した博士のいる研究所に着いてしまい・・・

「小が大を喰う」を地で行くブラックなコメディ佳作。

歴史ある小国がアメリカ傘下に入れば経済が潤うと確信し戦争を仕掛ける。ところが弱小国で戦争経験もないので、軍装は十字軍よろしくの鉄製の「鎧」。武器は弓矢のみ。

実にシュールである。そんな恰好ゆえにセントラル・パークで見回り中の放射能用の白い防護服を着た警備員と遭遇すると互いが『火星人』と誤解する。

それが地下室に避難している市民たちに曲解されて伝わってき、パニックになる。これはオーソン・ウェルズのラジオドラマで、火星人が攻めてきたというSF物語をあまりにもリアルに生放送し全米がパニックに陥った「宇宙戦争」の再来というかパロディだ。

様々な小ネタがあり、クスクス笑いが続く展開。そして一行が逃げ込んだ先がラグビー・ボール大の小型爆弾と開発博士と美人の娘がいる場所。

隊長さんは作戦を突如変更し、爆弾と博士親娘、偵察に来た軍の将軍と市警署員を連れて国に帰る。ところが国では敗戦して占領軍が来ると思っているから、さあ大変。しかも爆弾は世界に一つだけの試作品だが、威力は北米全土を吹き飛ばすほど。

それがヨーロッパの小国の手に落ちたとなったから世界の大国はパニック状態。フランスやイギリスの隣国系は早々に小国支持を表明。ソ連や中国まですり寄ってくる始末。

一方のアメリカは相手が小国過ぎて、通常の威嚇なり制圧は却ってブーメランになると危惧。

さて、どうなるのか。どこまでも皮肉が効いていて興味深いし、セラーズが、軍隊長、首相、女王陛下の三役をこなす怪演も楽しい。

小型爆弾と老博士といえばイギリス映画の秀作で神経衰弱になった博士が一週間後にロンドン市内で自爆すると政府に脅迫状を送りパニックになる「戦慄の七日間」(1950)を連想させる。

低予算ながら、ひねった設定とクスクス笑いから爆笑へと連鎖していく愉悦。いかにもイギリスのブラックな皮肉が上手く混然一体となった小品。

まあ、これは未公開になるよなと思わざるを得ないが、こういう作品にビデオでも巡り合うと嬉しくなるのが映画ファンというものだろう。

誰かに話したくなるコメディの佳作。

余談雑談 2022年1月29日
やっぱり「置いてけ堀」かな。パソコンや周辺環境は日進月歩中。なのに、こちらの脳内柔軟性は故障し、随分と前からフリーズ中。 SNSやらLINEとかは自分の意思で繋がらない権利を実行中。携帯電話だって意地でも折畳み式。 だが、そっち方面に詳しい