スタッフ
監督：アルフレッド・ヒッチコック
製作：アルフレッド・ヒッチコック
脚本：フレデリック・ノット
撮影：ロバート・パークス
音楽：ディミトリ・ティオムキン
キャスト
ウェンディス / レイ・ミランド
マーゴ / グレース・ケリー
ハリディ / ロバート・カミングス
ハバード警部 / ジョン・ウィリアムス
スワン / アンソニー・ドーソン
ペアソン刑事 / パトリック・アレン
ウィリアムス刑事 / ジョージ・リー
オブライエン巡査 / ロビン・ヒューガス
刑事 / ジョージ・アルダーソン
日本公開： 1954年
製作国： アメリカ ワーナー作品
配給： ワーナー
あらすじとコメント
女優グレース・ケリーとヒッチコック。ヒッチ監督は彼女の美しさに惚れ込み三作に起用した。折角なのでコンビの第一作にする。絶妙なエロティックさが漂うサスペンス・スリラー。
イギリス、ロンドン元プロのテニス・プレーヤーであったウェンディス（レイ・ミランド）と資産家令嬢だったマーゴ（グレース・ケリー）夫妻がアパートの一階に住んでいた。
しかし、マーゴはツアーで留守がちだった夫に隠れてアメリカ人作家ハリディ(ロバート・カミングス)と深い仲に陥っていた。しかも、離婚して不倫相手と一緒になる方に気持ちが傾いている。それを知ったウェンディスは妻を殺害し、遺産を手に入れようとする。そのために綿密な計画を立案し、金に困っていて前科のあるスワン（アンソニー・ドーソン）を仲間に引き入れた。
自分はハリディと一緒いるという鉄壁なアリバイを作った上で、自室の鍵をスワンに渡し、妻の殺害を決行させるが・・・
夫婦揃って因果応報に陥るスリラー作品。
不倫中の妻。完全犯罪で殺害を企む夫。しかも、アリバイには不倫相手である推理作家を立てる嫌味。
ところが、殺害計画が失敗し依頼した相手が死んでしまうと即座に作戦変更で、妻が不倫を脅されて実行犯を殺害したことにすり替える。
今度はそのために様々な策を講じて行き、ヒロインは追い詰められていくという何ともスリリングな展開。
とはいっても首謀者である亭主は、殺人の実行犯ではない。そして、妻の方は不倫中。
観客は冷静に考えると、どちらにも肩入れしづらいかもしれない。そこに警部が登場してきて、更にヒロインを追い詰めていく。
本作のストーリィ展開のカギは、まさに『鍵』である。内容と展開も面白く、更にヒッチコックの映像的遊び心が際立っていく。
本作での白眉は、ヒロインが実行犯を殺害してしまう『鋏』のシーンだろう。本作は3D、つまり「飛びだす映画」として公開されたバージョンがあるらしい。
まさしく、ヒッチコックはこのシーンのために用いたのだろうと推察できるし、事実、特段飛びださなくても、一生忘れられないショッキングな演出である。
ただ、ケリーの美貌に惚れ込み過ぎて、「あざとさ」や「やり過ぎ感」が際立つ演出もある。
それでも監督らしくロケではなくセットで自在に演出し、紡いでいく手法は、やはり見事。
原作はフレデリック・ノットによるもので戯曲からTV、そして本作での脚本まで手掛けた。
ゆえにラストの謎解きは、探偵の名推理よろしく、あまりにも説明的で、どこか講談調であり、映画的ではない。
しかし、それを映像で表すヒッチコックの力量も大したもの。いかにもバランスの取れたサスペンス・スリラーとして評価できよう。
