喝采 – THE COUNTRY GIRL(1954年)

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スタッフ
監督:ジョージ・シートン
製作:ウィリアム・パールバーグ、G・シートン
脚本:ジョージ・シートン
撮影:ジョン・F・ウォーレン
音楽:ヴィクター・ヤング

キャスト
エルジン / ビング・クロスビー
ジョージー / グレース・ケリー
ドッド / ウィリアム・ホールデン
クック / アンソニー・ロス
ラリー / ジーン・レイノルズ
エド / エディ・ライダー
アンガー / ロバート・ケント
ジョンソン / ジョン・W・レイノルズ
ダンサー / ジョージ・チャキリス

日本公開: 1955年
製作国: アメリカ パールバーグ&シートン・プロ作品
配給: パラマウント


あらすじとコメント

前回の「騎兵隊」(1959)のダブル主役だったウィリアム・ホールデン。今回も安定した演技で実力派と共演するドラマにした。アル中俳優の再起を描くバックヤードもの。

アメリカ、ニューヨーク気鋭の演出家ドッド(ウィリアム・ホールデン)の新作劇がキャスティングで紛糾していた。彼は若い頃から憧れのミュージカル俳優エルジン(ビング・クロスビー)を主役に抜擢しようとしていた。しかし、彼はひどいアル中で、既に忘れ去られた感がある大御所。当然、プロデューサーは大反対。それでも彼以外は考えられないと無理にオーディションに呼んだ。

結果、エルジンは、妙におどおどし、それを悟られまいと言い訳に必死。あまりの落ちぶれようにドッド以外はあきれてしまう。落ち込んだエルジンは当落も聞かずに帰ってしまった。

ドッドは急いで住まいに行くと、彼は戻っておらず妻のジョージー(グレイス・ケりー)が一人で居て・・・

アル中の大御所俳優と妻と演出家を描く重厚なドラマ。

憧れの大スターを復活させたいと願う演出家。酒は絶ったという大御所。そして献身的だが、妙に出しゃばりで勝気さが漂う妻。

三者三様の個性のぶつかり合いを演劇界のバックヤードを絡めて描く内容。

大御所は結局、ストレスから酒に逃げ、それでも二枚舌で誰からも気に入られようとする八方美人タイプ。

しかも演出家に対し、妻が当時5歳の息子を亡くしてから先に酒に溺れ、結果、自分もつられて飲酒癖が付いたと言い、更に以後、きつく自分に当たり、押さえつけて君臨するようになったと。確かに夫人の言動はそれを裏付けるし、演出家が思う以上に勝ち気。

三人の価値観がぶつかり合い、軋轢を生み、歯車が完全に狂っていく。

良く出来た脚本であり、ミスリードも忘れない。出演陣も流石。

ウィリアム・ホールデンは、本作の前年ビリー・ワイルダーの好編「第17捕虜収容所」(1953)でアカデミー主演男優賞を受賞し、脂が乗っている時期。引くところとでるところのメリハリをわきまえた演技を披露している。

大御所役のビング・クロスビーは歌唱力抜群で明朗快活な典型的善人を演じることが多い役者である。それが自身を彷彿とさせながら、拗ねた駄々っ子のような脆弱な役どころを演じる。

『アル中』や『薬物中毒』役はアカデミーへの近道といわれているが、成程と思わせる演技だ。ただし、少しやり過ぎが勝る。

そして、紅一点のグレース・ケリー。ホールデンとは本作と同年、日本ロケをした朝鮮戦争モノの「トコリの橋」(1954)に続いての共演。

あちらでは仲睦まじい夫婦役で、こちらでは敵対する役。だが、そんなケリーがアカデミー主演女優賞を受賞した。

名優たちのぶつかり合いの中で、ひと際、光っているのも事実。絶世の美女ながら、美人のオーラを消した存在に終始した結果だろう。

介護生活に疲れて嫌味な印象を放ちながら、どこか女性の夢を捨てていないという難しい役どころを見事に演じていると感じた。

大団円的なハッピーエンドにしなかったことも成功の要因だろう。

派手さはないが、重厚なるドラマである。

余談雑談 2021年12月4日
ギャンブルに興味はないのだが。何よりも勝負が嫌いで、緊張感でアドレナリンなりドーパミンが分泌されない性質かもしれない。ハラハラドキドキは映画か見知らぬ飲食店を選ぶときだけで宜しい。 まして、それに金銭が絡むとなると、更に拒否反応が起きる。「