先立ての「勤労感謝の日」。令和になり、天皇誕生日が変わったことを忘れていて、今年最後の祝日。まあ、毎日が休日のような人生だし、祝いたいこともないけどな。
その日、東京は晴天だった。さて、ランチはどこへ。この天気なら散歩がてらビールが一本飲める店だな。
浮かんだのは最長電波塔近くの家族で営む食堂。確か定休日はないはず。確認のしようがないが、恐らくは開いているだろう、と。
開店時間は知っている。なので、店の口開けを目指し散歩スタート。ところが11時に店に到着したら、何とシャッターが下りている。
げッ、休みでやんの。頭の中で組み立てたメニューが崩れ落ちる瞬間。何ってこったと、ふと見上げると最長電波塔。
中にはフードコートがあるな。下のモールにある衣料品屋で4足990円の靴下も欲しいしと予定変更。
絶句した。多くのベビーカーを押す家族連れ、カップルや家族総出の人など歩けない程の大混雑。感染者激減で、こっちは人出が激増ってことかよ。
フードコートなんぞ、完全満席で、一人用の仕切り版が並ぶカウンターまで家族連れが数席分確保している。新たに来た家族連れたちも、想像を絶した混雑で絶句している。
誰も、ここまでの混雑を予想してなかったんだ。爆竹でも鳴らして席を開けさせるわけにも行かず、即座にあきらめた。
ならば、確実に開いている店。そこはサイドメニューが少ないが、ビールはあるし、ラードまみれの昔風のとんかつが口に合う店。大好きで、十日に一度は行く我が心のとんかつ屋なのである。
先週も行ったが、選択肢はない。年甲斐もなく脂っこいものが好きでそこのとんかつは思い出の味。とはいっても、そこは暖簾分けで、本店は30年以上も前に閉店。もう一軒、暖簾分けがあるがそちらよりも本店の味を踏襲していると思い、長年通っている。
昔風のポテトサラダも白い皿にキャベツとパセリ付きで出て来る。また、それでビールだな。それとメンチとコロッケ一個づつ。定番というか鉄板チョイス。昔、本店ではそれが二個づつで「ニコニコ・ライス」500円で食べられた。まあ、昭和の話だ。
若干、混み気味のバスに乗り、路地裏の店に到着。貸切だった。
夫婦のみで営む小さな小さな店。近隣への昔ながらの顧客にだけ出前を運び、それがメインだろう。気が付くと、徐々にメニューが減り、コロッケとメンチひとつづつだって、ある意味、裏メニューだ。
旦那さんは話好きで、調理が終わると出てきて、色々な話をする。
すると、そろそろですかねと。いつまで店を続けるか、真剣に考えていると切り出してきた。随分と若く見えるが齢72歳だと。
その店も30年は通っている。こちらも年を重ねた訳だが、気にも留めてなかった。でも、多くの大好きな店が閉店してきたし、自分の老化だって嫌でも感じる。
すぐそこに閉店があるのか。喧噪後の静寂に包まれた瞬間。怖くて確認したくないが、ならば最低でも、成人病数値が悪化しようとも、週に一度は通わないと。