スタッフ
監督:ルイス・ギルバート
製作:ゴージ・メイナード
脚本:ヴァーノン・ハリス、ルイス・ギルバート
撮影:オットー・ヘラー
音楽:ケン・ジョーンズ
キャスト
コンラッド / クルト・ユルゲンス
ハート / オーソン・ウェルズ
リズ / シルヴィア・シムス
ヘンリケス / ジェレミー・スペンサー
スキナー / ノエル・パーセル
カーター婦人 / マーガレット・ウィザース
香港側警部 / ジョン・ウォーラス
「唄い手」ジョニー / ロイ・チャオ
チェン / ルイ・セト
日本公開: 1960年
製作国: イギリス アーサー・ランク作品
配給: 日本RKO
あらすじとコメント
香港を舞台にした作品で繋げた。今回も異邦人の恋愛がメインだが、少しひねった展開を見せる作品。
イギリス領香港。故国オーストリアを追放され、以後、放浪者となったコンラッド(クルト・ユルゲンス)は、香港に流れ着き、酒を浴び、喧嘩に明け暮れる自堕落な日々を送っていた。
とある晩、ナイトクラブで酒に酔い、客として来ていた香港マカオ間の定期連絡船の船長ハート(オーソン・ウェルズ)をボーイと間違え、侮辱した挙句、他の客らと喧嘩を始めてしまう。
翌日、業を煮やしたイギリス領事館は、コンラッドに香港からの強制退去命令を下し、マカオまでの片道乗船券を手渡した。仕方なく命令に従い、乗り込んだのはハートの船だった。侮辱されていたハートは激怒し三等船室に彼を押し込もうとする。それを見て抗議の声を上げたのが、女子小学生の一団を引率するリズ(シルヴィア・シムス)。しかし、ハート船長も中々の曲者で、相手にしない。どうせマカオまでの数時間だとリズに謝礼を述べるコンラッド。
しかし、マカオに到着すると、その地を統括するポルトガル政府から、以前のトラブルから要注意人物登録になっていると上陸を拒否され・・・
異国情緒に溢れる香港を舞台に繰り広げられるドラマ。
いたるところで問題を起こし、都度、国外退去を喰らう流れ者。そんな主人公は、香港からもマカオからも入国拒否を受け、否応がなく船上生活者の身となる。
しかし、そのような状況でも傍若無人であり、諦念感を漂わせ、それでいて優雅さが残る。
そんな彼に惹かれる英国人の女教師。そして船の乗組員たち。一方で、主人公を目の敵にするのは巨漢の船長である。
冒頭で、主人公と敵役になる船長、双方の人となりを紹介するため、コメディ要素を絡めた派手な喧嘩のシーンで幕を開ける。
それからは、お互いのいがみ合いが続く海上のシーンにシフトしていく。
それだけは弱いからと、他の乗組員や、小学生たちの仲違いといった人間ドラマをちりばめて進行する展開。
とはいっても、作劇法としては、主人公と女教師の恋がどうなっていくのでしょうか、ということに観る側の興味を持たせる演出。
つまり、まどろっこしいのだ。ゆえに、冗漫な印象を受けた。一応は、作り手も、飽きさせないような算段をしているが、どうにもトロい。そろそろ飽きて、途中棄権でもするかと思っていると、終盤に劇的な変調が起きる。
そこでやっと、手堅い監督である、ルイス・ギルバートらしさが生きて来る。
決して意表を突くような驚くべき展開ではないが、サスペンスとアクションが上手く噛み合った、いかにもイギリス映画らしい、地味ながらも思わず身を乗りだしたくなる進行ではある。更に当時としては、どこか奇妙さを伴うというアンバランスさも混在する。
それは、異国情緒たっぷりであるのだが、舞台が香港ゆえに、風光明媚さが際立つ訳でなく、猥雑とした雰囲気が漂う場所ということも加担していると感じた、
どうにも不思議なティストが絡んで、異国人である、訳アリ人間たちの人生があぶりだされていくという寸法。
日本ではドイツの軍人役が多い印象のクルト・ユルゲンスが、中々どうして、堂に入った演技を披露しているし、怪優であり、名監督でもあるオーソン・ウェルズも、ふてぶてしくヤラしい演技。
俳優陣や物語の進行といったバランスは悪くないのだが、いかんせん、中盤までのドラマ部分が冗長で、欠伸がでそうになるという致命的欠点が勝っている。
ただ、日本人からすると、さして遠くない異国の香港で、白人たちが織りなすドラマは奇妙な憧れをも感じる。
流れ者を中心とする異邦人たちが活躍する映画は数多くあるが、大体は、中南米やアフリカといった設定が多い中、それらとは完全に違う異国。
そしてイギリス映画。当時はイギリス領なので、当然なのだが、それでも、妙な異国情緒に浸れる作品ではある。