スタッフ
監督:ビリー・ワイルダー
製作:B・ワイルダー、I・A・L・ダイヤモンド
脚本:B・ワイルダー、I・A・L・ダイヤモンド
撮影:クリストファー・チャリス
音楽:ミクロス・ローザ
キャスト
ホームズ / ロバート・スティーヴンス
ワトソン / コリン・ブレークリー
ガブリエル / ジュヌヴィエーヴ・パージュ
ホームズの兄 / クリストファー・リー
墓堀人 / スタンリー・ホロウェイ
マダム・ペトロヴァ / タマラ・トゥマノヴァ
ロゴジン / クライヴ・レヴィル
ハドソン夫人 / アイリーン・ハンドル
ヴィクトリア女王 / モリー・モーリン
日本公開: 1971年
製作国: アメリカ ミリッシュ・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
今回も異色のシャーロック・ホームズ作品で繋げる。監督は大の御贔屓ビリー・ワイルダーで、当時のロンドンやスコットランドの雰囲気も上手く再現された洒落た作品。
イギリス、ロンドンホームズ(ロバート・スティーヴンス)は、このところロシアのバレエ団のプリマドンナに求婚されたり、つまらない依頼などで閉口していた。
そんなある日、辻馬車の御者が、彼の住所を書いたメモを持つ、ずぶ濡れで記憶がないガブリエル(ジュヌヴィエーヴ・パージュ)を連れてきた。ホームズは彼女の指輪やドレスからベルギーから来た人妻と探り当て、興味を持った。
そして相棒のワトソン(コリン・ブレークリー)と調査に乗りだすが、どうにも、かなり複雑な背景が関係していそうで・・・
ホームズ小説の新作の態で繰り広げられる物語。
映画はワトソンの死後50年を経て開錠される遺品箱から始まる。中には書簡が入っていて、かつて解決した幾つもの有名な難事件は、ワトソンが書き留めていたものであったことが綴られていた。
他方、ホームズ自身の恋愛等、プライヴェートが強く関わる4つの事件に関しては公表を伏せておいた、と。
その内容を巡る進行。ただし、4つ全部を描くのではなく、ベルギーの人妻が絡む国家をも巻き込む事件をメインとして描く。
ワイルダーは当初、当時のコンビ脚本家I・A・L・ダイヤモンドと共同で4つの事件というか、ホームズらしい新作4作を書き、全部を映画化しようと考えたらしい。
しかも当初のキャスティングでは、ピーター・オトゥールとピーター・セラーズであった。
しかし、キャストは幻となり、全内容だとあまりにも長尺ゆえにあきらめて、サーカス団の小人とバレエ団の内容を少しだけ絡めて残した。
なので、ちらりと絡む別な内容も見てみたいと思わせるのは流石のワイルダーだと感じた。
それに19世紀末のロンドンやスコットランドのセットや雰囲気は見事に醸しだされていて妙味に溢れる。
ただし、全体的にキャスト陣が地味で華やかさに欠けるのが残念。それでも、ネス湖の怪獣やら、謎めいた変色したカナリヤなど、怪奇趣味も漂い、ホームズが扱い、解決した新作かのような雰囲気。
実にワイルダーらしくない作品ではあるが、それでもちゃんと見せる進行は、成程のワイルダーと感じさせる。
彼のフィルモグラフィーの中では異質だが、ヴェテラン監督の肩肘張らない余裕が感じられ嫌いではない。