高校教師 – LA PRIMA NOTTE DI QUIETE(1972年)

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スタッフ
監督:ヴァレリオ・ズルリーニ
脚本:エンリコ・メディオ−リ
:ヴァレリオ・ズルリーニ
撮影:ダリオ・ディ・パルマ
音楽:マリオ・ナシンベーネ

キャスト
ドミニチ / アラン・ドロン
ヴァニーナ / ソニア・ペトローヴァ
モニカ / レア・マッサリ
モスカ / ジャンカルロ・ジャンニーニ
マルチェッラ / アリダ・ヴァッリ
マルチェロ / レナート・サルヴァトーリ
エルヴィラ / ニコレッタ・リッチ
主任教師  / サルヴォ・ランドーネ
ファヴァーニ / アダルベルト・マリア・メルリ

日本公開: 1973年
製作国: イタリア チタヌス作品
配給: 東和


あらすじとコメント

前回主役だったナタリー・ドロンの元夫。つまりアラン・ドロンが同じく教師と生徒の禁断の世界を演じた作品にする。ドロンながら舞台もスタッフもイタリア系という異質感漂う人間ドラマ。

イタリア、リミニ夏は観光客で賑わう避暑地だが、冬は誰もいない寂れた小さな港町。そこに臨時教員としてドミニチ(アラン・ドロン)がやって来た。36歳の教師くせに無精ひげを生やし、どこか諦念というか世捨て人のような態でもあった。

そんな彼には年上の妻モニカ(レア・マッサリ)がいた。10年前に彼女は、彼との不倫の果てに亭主を捨てた。以後生活を共にしているが、子供もなくどこかで既に愛情も冷めている感じだ。しかし、それはあくまでドミチの方であり、妻は女としての性を忘れず相手にしてもらえない腹いせから浮気をしている。

それに感付きながらも素知らぬ振りをするドミニチ。何やら過去に秘めているものがあり、それが心の奥底に沈殿しているようでもある。

赴任初日、彼が受け持つのは18〜9歳の年長クラスになった。大学進学か就職かを決める学年である。様々な生徒がいる中、どこか陰のあるヴァニーナ(ソニア・ペトローヴァ)がいて・・・

互いに暗い過去を持つ男女の厳しい道行を描くドラマ。

略奪婚をして10年経つ36歳になる男。19歳で大人びた雰囲気というよりも世捨て人的諦念感が漂う少女。

ありがちな禁断の師弟愛を美しく謳いながらも、ドロドロ系の不倫ドラマを意識する人も多いだろうか。

確かにそのティストはある。だが、どうにもミステリアスな過去がお互いにあり、それを知る人物らも散見したりするので 違う方向性に引き摺られる。

何せ小さな田舎町。限られた人間関係と決まった享楽。誰も誰かしらの秘密を知りながら、匂わせはするものの広言しない閉鎖性もあるようだ。

このような地域性に身を沈める主人公が、妻の嫉妬に閉口し、文学など知的レベルの高い生徒に心乱れていくのも頷けはする。

それにしてもいびつな人間ばかりだ。誰もが屈折した価値観を持ち、どちらかというと生理的というか、肉体的欲望が優先される『大人』の世界。

だが、いびつなのは大人だけではなく、ヒロインにも何らかの関係があるようだ。そんな女生徒の強烈な母親。家庭訪問に来た主人公をいきなり罵倒する激情型である。母娘ながら、まるで正反対な印象。

そういった人間らが、薄ら寒い田舎の港町で繰り広げる痴態とも呼べる姿をえげつなく描いていく。

主人公と女生徒の秘密とは何か。それがさらされた時、二人はどういう行動にでるのか。

「いびつ」でありながらも、それが「個性」であり、その存在を認めつつも、関係性をどう保ち、もしくは切り捨てていくのか。人生の被害者もいるし、素知らぬ振りをするのが大人の対応。

しかし、誰もが共有する秘密であったらどうなるか。蚊帳の外の人間にしろ、悩みは尽きない。

だが、それら全員が他人への憐憫ではなく、自己保身的感傷なのが、流石のヨーロッパ系映画だと感じる。

監督は大好きなイタリア人監督ヴァレリオ・ズルリーニ。「激しい季節」(1959)、「鞄を持った女」〈1961〉、「国境は燃えている」(1965)など公開作は少ないが、どれも女性の薄幸さや、人生の激しさと厳しさ、立ち向かうことすら許されない絶望感に苛まれるものばかりながら大好きな作品群である。

それらを踏まえた上で、いびつで諦念感のある女性を描かせると、流石のズルリーニ監督だと思うしかない濃厚なドラマ。

余談雑談 2021年6月26日
酒漬けの一週間。初日は午前中に最長電波塔近くの定食屋へ。 嬉しいことに酒類の販売は19時までの張り紙に変っていた。曇り空ながら、口開けの一杯は格別であり、火が点いたのは当然。 以降、ハシゴ酒の日々である。まあ、こうなることは織り込み済なのに