スタッフ
監督:マイク・ニコルズ
製作:マイク・ニコルズ
製作総指揮:ジョセフ・E・レヴィン
脚本:ジュールス・ファイファー
撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ
キャスト
ジョナサン / ジャック・ニコルソン
サンディ / アーサー・ガーファンクル
ボビー / アン・マーグレット
スーザン/ キャンディス・バーゲン
ルイーズ / リタ・モレノ
シンディ / シンシア・オニール
ジェニファー / キャロル・ケイン
日本公開: 1972年
製作国: アメリカ アヴコ・エンバシー作品
配給: アブコ・エンバシー
あらすじとコメント
前回の「卒業」(1967)を監督したマイク・ニコルズ。彼が別な視点から多感な大学生を描いた作品。異性に対する正反対の価値観を持つ仲良し男子の顛末。
アメリカ、ニュー・イングランド大学生ジョナサン(ジャック・ニコルソン)とサンディ(アート・ガーファンクル)は親友だが、こと女性に対する考え方は正反対だった。
特にジョナサンは肉体的魅力こそ総てであり、深入りは後々面倒になると割り切った考え方で、それを実践。二人はあるパーティで美人と評判のスーザン(キャンディス・バーゲン)を見かけた。初心なサンディがやっと声を掛けると、彼女の方が積極的に対応してくれた。
すぐにはその手の関係にならないが、付き合いが嬉しくて逐一ジョナサンに報告していくサンディ。ところが、それによって、ジョナサンの肉欲に火が点いて口説き落としてしまう。結果、三角関係となるが、初めて心底愛せる相手だと気付くジョナサン。
ところが、スーザンはサンディを選び結婚してしまい・・・
異性への価値観の違いから派生する若者たちの人生模様。
性欲が最優先であり、それを含めて心体一致してこその関係が重要。方や、時間をかけて紡ぐ過程に相互理解を増幅させたいタイプ。
正反対の大学生二人が、社会人になってどのような人生を辿っていくかを描く。
肉欲第一の主人公は税理士になり、相方は医者になっても付き合いは続いていく。
ただ、人生の経験値が上がっていくと、その価値観は変貌するのか、もしくは同じく継続していくのかが、人間として重要な課題にもなってくる。
それによって翻弄される女性や、逆に狡猾な女性が存在し、今度は男の方が病んでいったりもする。
性欲最優先を当然と嘯く主人公を演じるニコルソン。それに対し、本来ミュージシャンのアート・ガーファンクルが意外と演技が上手いので驚いた。
しかも監督のマイク・ニコルズが「卒業」(1967)で起用し大ヒットを飛ばした音楽担当のサイモン&ガーファンクルの片方である。観る側はどこかで、どうしても「卒業」との関連性を妙に意識させられてしまうという、憎い起用でもあると思った。
その上、一切、彼には本作での音楽を担当させずに、既存のジャズやクラシックを起用するイヤらしさも披露している。
それでいてキャンディス・バーゲンやアン・マーグレットら、女優陣には惜しげもなく全裸を晒させ、男性観客の興味を引いてくる。しかし、双方の女性とも、当時の日本人としては感情移入しづらいタイプではないだろうかとも感じた。
結果、自分の価値観を持つ登場人物の誰にも、自己投影もしくは憧憬しづらく、何とも重苦しいドラマの印象が勝る。
でも、今じゃ、単純に異性だけとの恋愛を描けないから、このようなリアルな恋愛人間ドラマを見せられたら、もっと神経的にやられるかもしれない。
結局、恋愛も人生も一筋縄では運ばないと教えてくれる教示的作品でもある。