スタッフ
監督:マイク・ニコルズ
製作:ローレンス・ターマン
脚本:バック・ヘンリー、カルダー・ウィリンガム
撮影:ロバート・サーティース
音楽:デイヴ・グルーシン
キャスト
ブラドック / ダスティン・ホフマン
ロビンソン夫人 / アン・バンクロフト
エレイン / キャサリン・ロス
ロビンソン氏 / マーレイ・ハミルトン
ブラドックの父 / ウィリアム・ダニエルズ
ブラドックの母 / エリザベス・ウィルソン
スミス / ブライアン・エイヴリー
マクリーリィ / ノーマン・フェル
マクガイア / ウォルター・ブルック
日本公開: 1968年
製作国: アメリカ ニコルズ&タールマン・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
「黄昏」(1951)、「スタア誕生」(1954)と男女の年齢差と立場の格差が生む愛憎劇を扱ってきた。ここで、男女の立ち位置が逆の視点で描かれた有名作にしてみる。
アメリカ、ロサンゼルス大学を首席で卒業し、帰郷してきたブラドック(ダスティン・ホフマン)は両親が自分を自慢するために開いたパーティーに閉口していた。鼻に付く客たちのお世辞よりも、先行きに不安を感じていたのだ。
そんな彼に興味を持った招待客のひとりロビンソン夫人(アン・バンクロフト)は、気分が悪くなったから、親から褒美としてもらった赤いスポーツカーで、自宅まで送るように頼んできだ。気の進まない彼だったが、かなり強引なタイプの中年女性で、半ば無理矢理送らされた。
そして夫人の家に着くと、彼女は微妙に雰囲気を変えてきて・・・
中年女性に翻弄される優等生のお坊ちゃまの葛藤と成長を描く。
息子を溺愛し、甘やかす両親。まるで高級なペットのような扱いだ。
そんな両親の友人たちも見栄っ張りで自己肯定感と顕示欲の塊のような人種ばかり。
主人公が今後に不安を抱くも当然かもしれぬ。
そんな悩める無垢な青年を翻弄し、肉体を蹂躙し、それこそ愛玩動物として自己都合で丸め込んでいく中年人妻。
しかし、青年だってそれに連れ成長していく。
そして新たに絡んでくるのは人妻の一人娘。しかも母親とは正反対で清純だ。
当然の成り行きで若い方に興味が移っていく主人公。それを感じ取った人妻はどのような手に打ってでるのか。
まあ、ラストはあまりにも有名なので説明の必要もないだろうか。
若者の成長過程と自分探しを描くアメリカン・ニュー・シネマの一本として認知されてもいる。
何と言っても人妻役のどこか、くたびれた風情ながら、若者を鼻であしらうアン・バンクロフトの存在感が素晴らしい。
ダスティン・ホフマンのメソッド演技は鼻には付くが、背伸びばかりで地に足が付いていない情緒不安定な青年の感じは良くでている。
リズミカルにシークエンスを繋ぎ、適度に端折ったり、不意にサスペンスを盛り立てたりとメリハリがあるマイク・ニコルズ演出も冴えている。
しかし、やはり本作の白眉はサイモンとガーファンクルによる音楽の起用だろう。
いずれにしてもトータル的に見てバランスの取れた青春ドラマとして仕上っている佳作。