スタッフ
監督:スタンリー・キューブリック
製作:エドワード・ルイス
脚本:ダルトン・トランボ
撮影:ラッセル・メティ
音楽:アレックス・ノース
キャスト
スパルタカス / カーク・ダグラス
クラサス / ローレンス・オリヴィエ
クラッカス / チャールス・ロートン
バリニア / ジーン・シモンズ
アントナイナス / トニー・カーティス
バタイアタス / ピーター・ユスチノフ
シーザー / ジョン・ギャヴィン
ドラバ / ウディ・ストロード
クリクス / ジョン・アイアランド
日本公開: 1960年
製作国: アメリカ ブライナ・プロ作品
配給: ユニバーサル
あらすじとコメント
今回もスタンリー・キューブリック作品。前回の「バリー・リンドン」(1975)より古い設定のローマ帝国時代。らしくない印象もある、彼がたった一本手掛けた史劇大作。
リビア 共和制ローマ時代鉱山で働く奴隷のスパルタカス(カーク・ダグラス)は反抗的な態度で、飢え死の刑に処せられた。しかし、剣闘士を養成するバタイアタス(ピーター・ユスティノフ)の目にとまり、買い取られ、養成所に連れて行かれる。
そこで鍛錬を積まされる日々を送った。ある日、ローマから元老院の実力者クラサス(ローレンス・オリヴィエ)一行が来て、連れの女性のために命を懸けた剣闘士の戦いを見たいと言いだした。
そしてスパルタカスが選ばれて・・・
奴隷の武力蜂起と特権階級の姿を描くスペクタクル巨編。
反骨精神の塊の奴隷。彼が命懸けの決斗で負けるが、対戦仲間が殺せと命令されるも、無言で反抗し、逆に貴族たちに刃を剥いて処刑される。
そのことから主人公が特権貴族階級に対して強烈な敵愾心を燃やすこととなる。
やがて蜂起し一大勢力を形成しつつローマ帝国と対峙していく。
主人公に対抗するのがローレンス・オリヴィエ扮するローマの実力者で、裏で元老院自体を独裁制で牛耳ろうと画策もしている。
しかもホモセクシャル的な匂いを放出しながら、実は頭脳明晰のエリート特有の脆弱さを際立たせる存在として描かれる。
その他に、主人公と敵対実力者双方に慕われる奴隷ながら、どこか高貴さと強さを併せ持つヒロイン、ずるがしこく立ち回る剣闘士養成所所長や、老獪な元老院重鎮など、クセモノというか個性的な人間が多く登場してくる。
序曲から休憩をはさむ3時間を超える超大作で、合戦場面など壮大なスケールで描かれ、こちらを圧倒してくる。
メリハリもあり、飽きることなく見ていけるが、面白いことにキューブリック自身は自分のフィルモグラフィーから外している。
確かに、キューブリックらしくないと感じさせる。
ある意味、どこか「呪われた映画」でもある。
元々はアンソニー・マン監督で撮影が開始されるが降板し、まだ新人扱いのキューブリックが招集された。
それは本作の前に、やはりカーク・ダグラス主演の「突撃!」(1957)で組んだからだろう。
また、脚本は赤狩りでハリウッドを追われていたダルトン・トランボが、本作で実名復帰を果たした記念的作品。
しかし、キューブリックは現場で何度も書き直し、クレジットにはトランボでなく自身にしろと主張した。
兎にも角にも、裏で様々なトラブルが起きた作品である。そのほとんどの原因は、製作総指揮を兼ねた実力者カーク・ダグラスによるものと言われている。
確かに大スターであり、ヒット作、問題作に携わってきたので、当然とも思えるが。
『反骨の英雄』を描くが、決してハッピー・エンドではないのもダグラスが好きそうな案件だし、本当はキューブリックも物語自体は嫌いではないのではと感じさせる。
有象無象的戦闘場面を妙味を持って撮る手法や、奇をてらわない演出術は、徹底的に凝らなくても娯楽大作として仕上げられる実力が、当時からあると痛感させられる。
嫌いじゃない超大作。