バリー・リンドン – BARRY LYNDON(1975年)

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スタッフ
監督:スタンリー・キューブリック
製作:スタンリー・キューブリック
脚本:S・キューブリック、B・ウィリアムズ
撮影:ジョン・オルコット
音楽:レナード・ローゼンマン

キャスト
バリー / ライアン・オニール
レディ・リンドン / マリサ・ベレンソン
ノーラ / ゲイ・ハミルトン
クィン大尉 / レオナルド・ロッシーター
ポツドルフ大尉 / ハーディー・クリューガー
ド・バリバリ / パトリック・マッギー
ブリンドン子爵 / レオン・ヴィタリ
バリーの母親 / マリー・キーン
ナレーション / マイケル・ホーダーン

日本公開: 1976年
製作国: イギリス、西ドイツ WB作品
配給: ワーナー・ブラザース


あらすじとコメント

スタンリー・キューブリック作品。「2001年宇宙の旅」(1968)、「時計じかけのオレンジ」(1971)の次に発表したのが本作。何とSFの後はコスチューム・プレイ。

アイルランド18世紀半ばの頃。バリー(ライアン・オニール)は決闘で死んだ父亡き後、母親に育てられた。やがて青年になると従妹に誘惑され、初めて知る異性に対し暴走してしまう。

結果、従妹が本気で惹かれていたイングランド軍の将校に対しても強烈な嫉妬を露わにする始末。

そして、従妹の気を引こうと将校に決闘を申し込んで・・・

成上り青年の人生を描く壮大なる大河ドラマ。

初体験相手への嫉妬から、将校に決闘を申し込む主人公。困惑した親族たちは将校の結婚後の給金が欲しいために何とか阻止を企てる。

ところが主人公が偶然に勝ってしまい、親族を含めて周囲を敵に回し、逃亡の身となっていく。

そこから実に波乱に満ちた人生を歩み、最終的には貴族の座を狙うまでになっていくという、立身出世物語である。

しかし、奇才キューブリックは単純に見える進行に才気を漲らせていく。

青年が辿る大河ドラマなので上映時間は3時間を超える長尺。そして各章に長いサブタイトルが付く。

これは「博士の異常な愛情」(1964)にも用いられている。要は、その部で主人公がどこからどのように生き、どうなるかを要約する長い『あらすじ』表現。

進行自体もナレーションによる先行きを明らかにするので推理的要素は全くない。

つまり、主人公がこの後、何処に着地していくのかを理解させたうえでの進行。それでも正攻法な作劇なのに飽きさせない手腕は流石である。

豪華絢爛なるコスチューム・プレイの人間ドラマに、妙にリアリティのある決闘場面や大戦闘シーンなど、何ともドキュメンタリー風な画面構成とカッティングで、今まで見てきた歴史絵巻とは違う印象を与えてくる。

やはり、カメラワークが圧巻。ロウソクの灯の明かりで撮影しようとNASAが開発した特殊レンズを使用し、薄暗い室内の場面は、レンブラントの絵画を思わせる荘厳さと人間の華奢さが浮かぶ。

完璧主義者ゆえに、本当に18世紀に放り込まれたような錯覚に陥り、そこで繰り広げられる人間の業と性。しかも、負け犬の。

イタリアのルキノ・ヴィスコンティが好んで描いた『滅びの美学』に似た画面なのだが、完全にキューブリック・タッチになっているので驚く。

しかも主人公を英国俳優に演じさせず、敢えてアメリカ人のライアン・オニールに演じさせるなど嫌味も効いている。

病的なまでの上昇志向と差別的貴族階級の差。そこに他国の軍人が絡む混乱と激動の時代背景。

やはり、キューブリックは侮れないと感じさせる巨編。

余談雑談 2021年2月20日
先週土曜の夜。寝ていたらグラりと来た。暫く振りだったので飛び起きた。 一瞬、揺れの大きさを判断しようと立ち止まり、この『廻る』感覚は10年前と同じだと感じ、入口の鉄戸を開けた。 長い揺れだったが、10年前は最後に直下型のような突き上げる激し