懐かしい奴からメールが来た。中米コスタリカでピザ屋を営むイタリア人の親友である。
確か、東日本大震災の直後にお見舞いの連絡が来たが、それ以来、音沙汰無しだった。
コスタリカは、自分が最後に行った海外であり、当時やっとピザ屋の商売が軌道に乗ってきたと言っていた。なので、10年以上も前のこと。
しかも最初の内容は『元気か』程度で、返信を乞う、だけ。いかにも奴らしい。
ところがイタリア語でメールなど書けるわけもない。ちゃんと書こうとすると時制の一致やら人称変化とか必要だが、真面目に語学として勉強などしてこなかった。
単語の羅列と身振り手振りで何とかなる類じゃないし、やはりハードルは高いよな。
でも、折角だからと最近の出来事である骨折とか、成人病の数値でも書いてみようと思ったが、単語自体難しいし、貴奴にすれば大したことはないよな。
そっちの商売はどうだ。コロナ禍の影響はとかも思ったが、コロナで通じるか。今更「武漢肺炎」でもないよなと断念。
で、ワタシ、マアマア。ソッチハ的な短文で送ってみた。翌日、長文の返信が。しかも、英語と日本語に自動翻訳付きだ。当然、逆に意味不明だったが。
それでも、登録してあった携帯電話のメルアドに、連絡が付くかと思って、取り敢えずメールしたと始まった。
自分もイタリアで随分とお世話になった乳母変わりの家政婦と彼のすぐ年上の姉が亡くなったとも書いてあり、自分は異国の地で独りぼっちになったと。
コロナ禍は「covid19」と呼称することも知り、当然その所為で商売は大打撃。
そもそもは自分をフェイスブックで探したが成功せずとも書いてあった。
そりゃそうだ。ツィッターを含め、SNSは一切手を出していない。安全性が信用できないし、躊躇している間にどんどん時代が進み、今更何に手を出して良いかも解らぬ。
それに引き換え、奴は最新が好きだったっけ。アイツがボローニャにいたときは日本のカメラやウォークマンを一つ差し出すと一ヶ月は無料で滞在できた。
確かに今と違い、即日配送などなく、最新式日本製品は彼の街で誰も持っておらず、ニセモノでない証明として自分付きで、自慢して歩いていたっけ。
一方、こちらは変わらぬ味と街並みが好きでイタリアに通ったんだけど。でも、もうイタリアも簡単には行けぬ。
そもそも奴はコスタリカだし、いざとなったら、数日なら姉さんの家にでもと思ったが、亡くなっていたか。
ご両親も早くに亡くしている。それにしても、奴の家系は短命だな。ふと、会いたいとは思うが、簡単にコスタリカには行けないよな。
考えたら、東京23区から出てないぞ。