ひとりぼっちの青春 – THEY SHOOT HORSES, DON’T THEY?(1969年)

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スタッフ
監督:シドニー・ポラック
製作:アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ
脚本:ジェームズ・ポー、ロバート・E・トンプソン
撮影:フィリップ・ラズロップ
音楽:ジョン・グリーン

キャスト
グロリア / ジェーン・フォンダ
ロバート / マイケル・サラザン
ロッキー / ギグ・ヤング
アリス / スザンナ・ヨーク
水兵 / レッド・バトンズ
ジェームス / ブルース・ダーン
ルビー / ボニー・ベデリア
ロッロ / マイケル・コンラッド
レイドン婦人 / マッジ・ケネディ

日本公開: 1970年
製作国: アメリカ パロマ─・ピクチャー作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

群像劇的人間ドラマに『ダンス』が絡む作品。ただし、明るく楽しいミュージカルではなく、大恐慌下の時代を舞台にしたアメリカン・ニュー・シネマの秀作。

アメリカ、カリフォルニア全米に失業者が溢れ返っていた世界恐慌下の1932年。

あてもなく海岸を歩いていたロバート(マイケル・サラザン)は、『マラソン・ダンス競技会』が開催される建物に、ふらりと入った。そこでは主催者で司会を務めるロッキー(ギグ・ヤング)が参加希望者たちのチェックをしていた。

その中に参加希望カップルのグロリア(ジェーン・フォンダ)もいたが、相方が気管支炎の疑いがあると参加を拒否された。どうしても参加したいグロリアは、ロッキーの勧めで、ただ佇んでいたロバートと組むことを提案される。訳の解らないロバートだったが、優勝賞金が1500ドルという高額に釣られて、俄かペアを組むことを承諾した。

そして、いよいよ競技会が開始されるが・・・

人間の尊厳をこれでもかと蹂躙する人間ドラマの秀作。

仕事がない時代にペアを組んでダンスを続ければ大金が貰える。食うにも困る時代でもあり、飛びつく人間が多いのは当然。

医師が常駐し骨折程度は処置するが、死亡責任は負わない。競技自体は、2時間で10分の休憩のみ。日に4回の食事と軽食が提供されるが、立って動きながらの飲食である。

ペアのどちらかが、両ひざを付いたら負け。片方離脱の場合はソロで24時間は継続可能だが、それまでに別なパートナーを見つけないと退場という厳しいルール。

観客は一度入場料を払えば何度でも出入り自由で、応援ペアを見つけてスポンサーになることも可能。まるで、競技大会というよりもギャンブル要素のある『見世物興行』である。

そこで繰り広げられるのは「えげつない」人間ドラマ。

主催者は、完全なる搾取側であり、参加者は負け犬たち。最後の一組になるまで、前例だと50日程度かかる苛酷な見世物。

参加者は女優を夢見るヒロインに、イギリスからやって来た美人の売れない女優。貧しいのに妊娠し、もう臨月だが、食うために参加する若いカップル。年齢を誤魔化しても一攫千金を夢見るヴェテラン参加者の水兵など、実に多彩である。

当初こそ、それなりの人間の尊厳や、自己主張をしているが、時が進むにつれて悲惨さばかりが際立つようになる。

盛り上げるために苛酷なレースをさせたり、下手な演技や歌を披露させて投げ銭を稼がせる。

惨めさばかりが強調されていき、もって行き場のない閉塞感と絶望感に苛まれる進行。

人間としてボロボロになり、まさに「ウォーキングデッド」、すなわち『ゾンビ』のような姿で動き続けていく。

主演のジェーン・フォンダは本作の影響で、ヴェトナム戦争中ということもあり、反戦、反体制の急先鋒となった。それほど彼女の政治信条を激変させた作品でもある。

出演陣の中では、主催者を演じたギグ・ヤングの見事な悪役っぷりが印象的。彼はこれでアカデミー助演男優賞を獲った。

他にも、ご贔屓コメディアンのレッド・バトンズや、イギリス美人女優スザンナ・ヨーク、イヤらしい演技のブルース・ダーンなど適材適所で皆が見事。

冒頭場面は、馬が草原を走り、脚を骨折すると、ためらいなく撃ち殺される牧歌的ながら、印象的なシーンで始まる。

劇中にも、何度かマイケル・サラザンのダンス大会後の姿が挿入されたりと、観客の注意を喚起させる印象的な演出が施され、トータル的に印象深い作品となり、シドニー・ポラック監督の代表作だとも感じる。

何とも明るい要素のまったくない濃厚で、絶望的な気分にさせられるのだが、ニュー・シネマの中で、決して外してはいけない秀作である。

余談雑談 2020年2月22日
成程、これが影響か。パンデミックで現在、地元は観光客が激減中だ。 住民としては、普通に道が歩けて有難いとは失礼か。何せ経済至上主義。土産店の店員がTVで、売り上げピンチとか答えている。 中国からの輸入野菜も減少し、飲食店など悲鳴が上がり始め