スタッフ
監督:ウディ・アレン
製作:ロバート・グリーンハット
脚本:ウディ・アレン
撮影:カルロ・ディ・パルマ
音楽:ディック・ハイマン
キャスト
ダンドリッジ / アラン・アルダ
ステフィ / ゴールディ・ホーン
バーリン / ウディ・アレン
フォン / ジュリア・ロバーツ
スカイラー / ドリュー・バリモア
ローラ / ナタリー・ポートマン
スペンス / エドワード・ノートン
フェリー / ティム・ロス
おじいちゃん / パトリック・クランショー
日本公開: 1997年
製作国: アメリカ スウィートランド・フィルム作品
配給: アスミック・エース
あらすじとコメント
前回はナポリ民謡を堪能する一風変わったミュージカル映画。今回はジャズ大好きなウディ・アレンが、いかにも彼らしい感覚で作り上げた何とも神経質さを感じる娯楽ミュージカル。
アメリカ、ニュー・ヨークセレブ生活を送るダンドリッジ(アラン・アルダ)一家。
妻のステフィ(ゴールディ・ホーン)とは再婚で、お互いに思春期の連れ子たちがいる。彼女の長女スカイラー(ドリュー・バリモア)には、心優しい恋人がいるが、自身は移り気な性格だ。多分、それは実の父親であるステフィの元夫バーリン(ウディ・アレン)に似たのかもしれない。
そんなバーリンは、未だにステフィに未練があるくせに、新たな恋人にフラれたから自殺したいと言いに来るような、どうにも頼りない神経症気味の中年男。
落ち込んで愚痴るがばかりの父親に、お似合いの女性がいるから何とかコンタクトを取らせようとする娘。ところが、その相手フォン(ジュリア・ロバーツ)は・・・
多作監督であるウディ・アレン念願の初ミュージカル作品。
弁護士と資産家系出身で社会福祉家の再婚者夫婦。二人して強烈な民主党支持者。
ところが、引き籠り気味の長男は極右系共和党支持者。長女は心優しき婚約者がいるのに、旅行先のヴェネツィアのゴンドラ漕ぎ、ラップ歌手、極め付けは母親が連れてきた元受刑者と次々と恋に落ちていく。
パリに住み、小説家として生きている元夫が新たな恋人として狙うのが人妻。
何とも、今風な個人優先のセレブ人種たち。ストーリィは家族それぞれの恋模様を中心としたもの。
それを主に往年のフレッド・アステア作品で使われた古いジャズをアレンジした曲に乗せ、突然ミュージカルになる作劇。
しかも、アレンにとって念願の初ミュージカルであり、色々と仕掛けを施してくるから何とも微笑ましい。
場所もNYに始まりヴェネツィア、パリとロマンティックな場所でロケされ、そして四季の移ろいが強調される中でミュージカル・シーンが綴られる。
長女の心優しき許婚者役のエドワード・ノートンの衣装は完全にアステアを意識させるセンスだ。
登場して来る楽曲もどれもクラッシク系ミュージカルを連想させながら、意匠の凝った演出で見せてくる。
印象的なミュージカル場面は三つあり、ひとつは病院内の群舞、そして幽霊たちの群舞、終盤でアレンとゴールディ・ホーンのロマンティックながら驚きの演出が入るセーヌ川岸での場面。
成程、アレンは力が入ってると感じさせ、往年のミュージカル映画ファンの心をくすぐってくる。歌も決して上手くないが、本人たちに唄わせているようだし、充分に美しいロケ場所の設定と凝った意匠の数々。
クラシック映画を踏襲しながらアレンジが加味される。それをオールスター・キャストで紡がれる愉悦。
ただし、ストーリィは、どこかおかしい人種というか、病んだ人間たちによる滑稽な現代劇なので、どうにもアレンらしい神経症的不安定さを醸している。例えるなら「アスピリン・ミュージカル」だろうか。
そこに違和感を覚える人もいるだろうが、中々、楽しいミュージカル作品である。