激突! – DUEL(1971年)

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スタッフ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作:ジョージ・エクスタイン
脚本:リチャード・マシスン
撮影:ジャック・A・マータ
音楽:ビリー・ゴールデンバーグ

キャスト
マン / デニス・ウィーヴァー
カフェ店主 / エディ・ファイアストーン
バス運転手 / ルー・フリッゼル
マン夫人 / ジャクリーン・スコット
蛇屋の女主人 / ルシル・ベンソン
車の老人 / アレクサンダー・ロックウッド
ガソリンスタンド店員 / ティム・ハーバート
ウェイトレス / シャーリー・オハラ
トラック運転手 / キャリー・ロフティン

日本公開: 1973年
製作国: ユニバーサル・テレビジョン作品
配給: CIC


あらすじとコメント

今回も、連結バスではないが、『大型車両』がメインとなる作品。言わずと知れた歴史的な金字塔でスピルバーグ監督の名前を世に知らしめた佳作。

アメリカ、カリフォルニア妻と口論をした翌日、マン(デニス・ウィーヴァー)は、友人に貸した金を返してもらうべく、南へ走っていた。

すると40トンの大型トレーラーが前方をノロノロと走行している。まったく、邪魔だと追い抜いた。ところが、それが癪にさわったのか、突然スピードを上げ近付くと追い抜き返してきた。恐怖を感じるマン。そして今度はまたノロノロ運転を開始。

いい加減にしろと感じたマンは、再度追い抜くとスピードを上げて引き離した。これだけ引き離せば問題なかろうと、ガソリン・スタンドに立ち寄った。

妻に電話をかけた後、道に戻ると、何と先程のタンク・ローリーが待ち構えていて、再びあおり運転をしてきた・・・

モンスター・トラックに追い回される男を描くスリラーの力作。

元々はTVムーヴィーとして制作された低予算作品。

運転をする一定の年齢の人間なら、昔の俗語で「一姫、二虎、三ダンプ」と聞いたことがあるだろうか。

その『三ダンプ』が信じ難いモンスターだったらという設定。しかも日本では、ほぼ走っていない40トンという巨大トラック。だから、日本人には恐怖感が一層増したと思われる。

しかも、広大な土地で延々と繰り広げられるし、相手の執拗性は全くもって半端ない。正面からは対峙できないし、まして衝突したら完全に負けるという事実もついてくる。

考えれば、実に単純な「抜きつ抜かれつ」という内容である。しかもひとり旅の主人公の他、相手トラックの運転手は顔出ししないで進行するし、途中で登場してくる人間だって、継続してでてくる脇役もなく、単純な行きずりの他人。

そんな単純な内容をこれほどのスリルとサスペンスで紡いでいくスピルバーグ演出は見事としか言いようがない。

しかも当時、弱冠25歳である。日本の怪獣映画に影響を受けていると公言しているし、本作では相手トラックを『怪獣』として描きたかったと。

後に監督が「JAWS ジョーズ」(1975)や「ジュラシック・パーク」シリーズにも、その価値観が踏襲されていると誰もが確信する、その第一歩である。

並々ならぬ才能が一挙に開花していると感じさせるし、アイディア勝負というよりも、「青さ」は感じるものの、確固とした『演出力』を確立していて、驚く他ない。

また、興味深いのは、これほどの作品なので、TV放映も多く、映画公開時版もあり4種類程度の吹替え版が存在していること。

主演のデニス・ウィヴァ─は全部が違う声優であり、彼主演の連ドラでアテた宍戸錠は分かるにしても、日本テレビアナウンサーだった徳光和夫は、一体どうなのよとも思う。

更に、テレビ朝日系バージョンでは、車内で流れるラジオDJの声は、昔、深夜放送で人気を博していた野沢那智と白石冬美コンビが登場し、別な意味で興味を削いでしまったと感じた。

とはいっても、単純ながら死の恐怖を与え続ける作劇は見事であり、成程スピルバーク゛は逸材だと感じる作品。

余談雑談 2020年1月11日
今回の都々逸。 「うちの亭主とこたつの柱 なくてはならぬがあって邪魔」 もしかして、夫婦間のものを選んだのは初めてかもしれぬ。 そもそも『都々逸』は敗者の文学というか、日陰者の人間が未練とか、儚い夢をうたう類。かといって、夫婦間でも良い。