スタッフ
監督:サイ・エンドフィールド
製作:サイ・エンドフィールド
脚本:ジョン・プレビル、サイ・エンドフィールド
撮影:ステファン・ダッド
音楽:ジョン・バリー
キャスト
チャード中尉 / スタンリー・ベイカー
プロムヘッド中尉 / マイケル・ケイン
ウィット / ジャック・ホーキンス
マーガレタ / ウーラ・ヤコブソン
フック / マイケル・ブース
ボーン軍曹 / ナイジェル・グリーン
マックスフィールド軍曹 / ポール・デーンマン
アレン / グリン・エドワーズ
オーウェン / アイヴァー・エマニュエル
日本公開: 1964年
製作国: イギリス ダイヤモンド・プロ作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
「武器の報酬」(1962)の主役スタンリー・ベイカーが翌年に出演した作品。彼はイギリス系の俳優で多くの作品に出演する他、プロデューサー業まで進出した。今回はその双方をこなした、19世紀に起きた史実を壮大なスケールで描く巨編。
南アフリカ、カタール1879年1月のこと。植民地として統治する大英帝国軍に対し、元来この地に住むズール族が一斉蜂起した。凄まじい闘志に満ちた部族で死をも厭わず、且つ、作戦行動にも長けていた。彼らを甘く見ていたイギリス軍は1500名で守っていた陣地を4000名の槍しか持たぬズール族に全滅させられてしまった。
彼らが次に向かう先は「ローク浅瀬」に駐屯するイギリス軍陣地。そこは戦闘経験がないプロムヘッド中尉(マイケル・ケイン)が指揮する100名に満たない軍隊と現地雇用兵や労働者のみ。一応、架橋建設に来ていた工兵隊のチャード中尉(スタンリー・ベイカー)もいるが、あくまで後方支援専門ではある。
先の惨状を見たムーア人が事実を告げると、兵士たちは撤退の準備にかかろうとする。ところがそこに、英国政府から死守せよという命令が届いて・・・
絶対不利な状況下での凄まじい戦闘を壮大に描く巨編。
植民地として管轄していたイギリス。情報は乏しいものの気位は高く、優位性を誇示しつつ統治するアングロサクソン。だが、現地人の突然の集団蜂起には即応できないのが普通であろうか。
軍人家系の気高い血脈が流れ、それが却ってプレッシャーの若い将校。方や、工兵隊という戦闘には直接加担しないジレンマでもあるのか、いざとなったら数か月入隊が先輩であり、危機対応にも優れているとマウントを取りにかかる主人公。
職業軍人であるヴェテラン下士官から、厭戦気分先行の前科者、絶望的状況に飲み込まれる若者。そして、イギリス人ではないがズール族よりも気高い先住民など、様々ながら100名規模の守備隊。
4000人はいるが火力的には圧倒的に劣勢なズール族。
しかも本作では「敵ながら天晴れ」と敵側をも認める。ここに「騎士道精神」的な、というか『優位性ゆえの余裕』を感じさせる作品でもある。
この作劇気風は第二次大戦初期の敗走が続いたイギリスの対日、対独戦争映画にも如実に描かれてきた気質であろう。
劣勢の中でも気高き誇りがあり、それが死に直結しようとも厭わない。ただし、日本人的「一撃必殺」の特攻的マインドはない。
だからこそ、最終的には娯楽映画として成立する作品が多い。
後にバート・ランカスターとピーター・オトゥール主演で「ズール戦争・野望の大陸」(1979)が製作されるが、リメイクではなく、冒頭の敗戦を描いた作品である。
本作は、壮大なアフリカの自然を背景に、連発ライフルがなく一発ごとに詰め替えという銃とズール族の槍と盾による攻防戦は即座に肉弾戦となり、それこそ血みどろの闘いになる。
ただし、裸族でもあるので銃剣刺殺や着弾銃創に関してはリアルではない。今ではVFXなどで、残虐性を伴うリアルな表現ができるだろうが、逆に『作り物』加減が、大自然を背景にし大人数でのロケーションの効果を上げていると感じた。
そして何よりも冒頭に白人の宣教師父娘が登場するが、敢えて宗教は人を救わないというネガティヴな印象を与える演出に興味を持った。
トータル的に壮大なスケール感がある巨編と認知できよう。