泥棒野郎 – TAKE THE MONEY AND RUN(1969年)

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スタッフ
監督:ウディ・アレン
製作:チャールズ・H・ジョフィ
脚本:ミッキー・ローズ、ウディ・アレン
撮影:レスター・ショア
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ

キャスト
スタークウェル / ウディ・アレン
ルイーズ / ジャネット・マーゴリン
ブレア婦人 / ジャクリーン・ハイド
ウォーデン / ジェームス・アンダーソン
フレッド / ハワード・ストーム
ジェイク / ロニー・チャップマン
ケイ / ルイーズ・ラサー
アル / ジャン・マーリン
ナレーター / ジャクソン・ベック

日本公開: 1971年
製作国: アメリカ パロマ─・ピクチャー作品
配給: 松竹映配


あらすじとコメント

今回も泥棒コメディにする。ウディ・アレンの初監督作で、以後の彼の作風を嗅ぎ取れる、いかにも彼らしい神経質さを楽しむ小品。

アメリカ、ニュージャージースラム街に生まれ育ったスタークウェル(ウディ・アレン)は、幼少期より小柄で、ひ弱ゆえに、いじめの対象だった。やがて少年犯罪の片棒を担うようになるが、元来の間の悪さと小心的行動で、常に足手まとい。

しかし、成長するにつけ、彼も小泥棒として頭角を現すようになる。それでも小さな窃盗などであったが、ならばと『悪の道』で大成しようと決めてはみるが、いかんせんセンスがない。

遂に、逮捕され収監された。出所後は一応真面目に仕事をしようとするものの、世間は冷たく、またもや窃盗に手を染める。ターゲットは公園で寛ぐ若い女性と決め、そっと後ろから近付くが気付かれてしまう。

ところが、その女性ルイーズ(ジャネット・マーゴリン)が美人だったことから・・・

小ネタ満載で描かれる小悪党の人生コメディ。

犯罪から逮捕収監、その後も数々の犯罪を繰り返す男。しかし、傷害や殺人はしない。何故なら頭がどこか弱く、小男にして神経質。

子供時代に両親が心配しチェロを買い与えるが、生来の音感を持ち合わせていないからあきらめざるを得ない。

一々、否定形での成長過程が紹介される。それでも一応、考えて犯罪をしようとするが、常に間抜けで挙動不審になるから、上手くコトが運ばない。

そんな主人公が恋に落ちて結婚し、子供までもうけるが、犯罪からは足を洗えない。結果、積み重ねで前科53犯、懲役800年と相成る。

それまでは脇役専門で、脚本も書いたりしたアレンが、自分主演で脚本を書き、監督まで務めるから、かなり力が入っていると感じる。

完全に自分への『アテ書き』で、若いくせに、小さくて頭髪も薄く、まったく冴えない風貌で言い訳ばかりする自己正当性を正面切って、という完全に『自虐ネタ』として描いていく。

それまでのアメリカ映画には存在しなかった主役タイプ。身体の小ささや風貌の悪さを売りにしたコメディアンは、チャップリンのように、以前から存在していたが、大体はコンビの片方だった。

しかも、アレンの場合、自分で脚本も書き、そこにチャップリンのような「体を張る」芸風は持ち込まない。あくまで小ネタと台詞で笑わせる。まるでチャップリンへの逆挑戦。

初監督作品で、彼が取った手法は「似非ドキュメンタリー形式」とナレーションによる説明。

だが、この手の神経質さがコンプレックスとなり、それを敢えてコメデイに置換する手法は、当時、日本人にはあまりウケなかったのも事実。

彼がユダヤ人であるといコンプレックスも日本では解りづらかっただろうし。

それでも考え抜かれた頭の良さに起因するギャグと体を張らない進行は彼の非凡さを感じた。

本作以降、アレン作品がどのように変化し、量産され続けたかを鑑みれば、以後の彼の作品の様々な出発点だと思わざるを得ないコメデイ。

余談雑談 2019年11月23日
神田神保町。月に一度、程近い水道橋に出向く。なのでランチはその周辺と決めて久しい。 その際には、行列嫌いの自分が、唯一、開店前に並ぶ安い天ぷら屋に行くことが圧倒的であった。 そこは『暖簾分け』システムの同じ屋号で、何店も「天ぷら」と「とんか