ジョルスン物語 – THE JOLSON STORY(1946年)

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スタッフ
監督:アルフレッド・E・グリーン、J・H・ルイス
製作:シドニー・スコルスキー
脚本:ハリー・チャンドリー、S・ロングストリート、他
撮影:ジョセフ・ウォーカー
音楽:モリス・ストロフ

キャスト
ジョルスン / ラリー・パークス
ジュリー / イヴリン・キース
マーティン / ウィリアム・ディマレスト
ヨルセン / ルドウィック・ドナス
バロン / ビル・グッドウィン
ヨルセン夫人 / タマラ・シェイン
アン / ジョー・キャロル・デニソン
ドックスターダー / ジョン・アレキサンダー
ヨルセン少年 / スコッティ・ベケット

日本公開: 1950年
製作国: アメリカ コロンビア作品
配給: セントラル


あらすじとコメント

「モダンミリー」(1966)は激動の1920年代を舞台にしたミュージカルであった。今回は同年代に実在し、活躍した歌手の半生を描くミュージカル的映画の良作。

アメリカ、ワシントン20世紀初頭、厳格な父親に育てられているヨルセン少年は、隠れて見にいった演芸小屋で、芸人マーティン(ウィリアム・ディマレスト)に乗せられ美声を披露してしまう。驚いたマーティンは早速、父親に弟子にしたいと申し出に行くが、即座に断られた。だが、ヨルセンは興味津々で家出までして彼を追ってしまう。

当然、警察に保護されるが、一時保護した神父が少年の美声に感動し、迎えに来た両親を説得する。何とか親の許諾を得て巡業に参加することになるヨルセン。

しかし、売れない日々が続き、やがて成長しジョルスン(ラリー・パークス)と改名して・・・

実在した大人気歌手の波乱に満ちた人生を描く秀作。

少年時代からショウビジネスに興味を持ち、既存のスタイルに飽き足らずオリジナリティを駆使し、その世界に君臨していったエンターティナーの元祖。

その過程を順を追って描いていく作品なのだが、実に良く出来た作劇で引き込まれていく進行。

「思い込んだら命懸け」の性分。当然、その激しさから周囲に迷惑を掛けていくが、次々と努力が認められ大スターへと昇って行くサクセス・ストーリィでもある。

両親を含め、周囲の人間たちに恵まれたというのも一翼だが、主人公だって受けた義理は温情で返すタイプ。

だから、観ているこちら側も憎めないのである。

巡業先で知ったジャズをいち早く取り込んだり、今では差別的と思われる白人が黒人の黒塗りで歌うという偶然から認知されていくのだから面白い。

そして初恋の相手との失恋から、女優との運命的な出会いで結婚し、一度は引退するものの周囲の暖かい激励で復帰していくまでが描かれる。

実にリズミカルな展開で、映画がサイレントから音を持った「トーキー」映画の第一作の主役に抜擢され、その人気は世界を駆け巡るという事実。

本作はイラストレーターで熱狂的映画ファンの和田誠が絶賛し、かつてキネマ旬報誌で人気を博した氏の「お楽しみはこれからだ」というコーナーのタイトルになった台詞が登場する作品でもある。

しかも和田は本作がリバイバル上映されるときに意訳されたこの台詞が変更されるのでは、という不安から翻訳字幕まで買ってでた事実がある。

更にはコメディアンの財津一郎も、唄い踊る時は「お楽しみはこれからだ」と始めるのが定型。

それほど多くの人間に影響を与えた作品であり、親子愛や師弟愛に、初めて舞台に花道を作ったり、日曜興行の開催やら、それまで暗かった客席を明るくし、観客の生の表情を見て歌うというスタイルを考えたりと舞台革命家でもあった。

それらがやがて『黒塗りシンガー』として歴史に残る発声映画第一作に抜擢されるなど、以前でのショウビズの世界を打ち破り、塗り替えた。

2時間を超える作品だが、印象に残る名セリフも数多く登場し、実に楽しく、かといってほろ苦さを残すなど実にバランスのとれた秀作である。

余談雑談 2019年10月26日
何とも偶然。上で扱う作品は随分と前から順番を決めていて、今回もかなり以前から決まっていた。 約三週間前、上の映画紹介でも書いたイラストレーターの和田誠が亡くなった。ファンだっただけに、奇妙な縁を感じた。 40年以上も前の連載だが、キネマ旬報