スタッフ
監督:アーヴィン・カーシュナー
製作:E・J・シェリック、S・ベッカーマン
脚本:バリー・ベッカーマン
撮影:ビル・バトラー
音楽:デヴィッド・シャイア
キャスト
ラヴィン首相 / ピーター・フィンチ
クーパー / マーティン・バルサム
ブエーゼ / ホルスト・ブッフホルツ
ショムロン准将 / チャールス・ブロンソン
アミン大統領 / ヤフェット・コットー
ドーラ / シルヴィア・シドニー
グル参謀長 / ジャック・ウォーデン
アロン / ロバート・ロッジア
ベギン / デヴィッド・オパトッシュ
日本公開: 1987年
製作国: アメリカ シェリック&ベッカーマン・プロ作品
配給: ヘラルド
あらすじとコメント
ドイツ出身の俳優ホルスト・ブッフホルツ。イギリス映画から、アメリカに渡り、「荒野の七人」(1960)あたりから認知された俳優で、出演作は玉石混合。本作は、まあ見られる方の作品。
イスラエル、テルアビブ240名を乗せたパリ行の旅客機が離陸した。直後、ドイツ人ブエーゼ(ホルスト・ブッフホルツ)ら「人民解放戦線」と名乗るパレスチナ系を含むテロリストが機をハイジャックし、リビアに着陸。
乗客100名はイスラエル人であり、ラヴィン首相(ピーター・フィンチ)らは緊急対策に入った。当初は、旅客機当事国フランスの対応を待とうとしたが、機はリビアを離れ、ウガンダに着陸。そこは軍事クーデターで政権奪取し、以後、独裁政治を断行するアミン大統領支配の国だった。
これでテロリストとウガンダとの二重交渉になってしまった。やがてテロリスト側は乗客を解放し始めるが、ユダヤ人だけは一切開放しなかった。
追い詰められるイスラエル政府。異国ではあるが人質救出のために、極秘の軍事作戦を立案する。そこでショムロン准将(チャールス・ブロンソン)が呼ばれ・・・
実話を基にした救出作戦を描くドキュメンタリー・タッチの作品。
現在も敵対するイスラエルとパレスチナ。
そのパレスチナがユダヤ人のみを対象にした人質事件を起こした。交渉は難航し、結局、突入作戦を決定するイスラエル政府。
それをイスラエル側から描いた作品である。時を同じくして本作同様、TVムーヴィーで「エンテベの勝利」(1976)も作られた。
日本では双方とも劇場公開が予定されていた。本作は当初「エンテベ急襲」の邦題で公開予定だったが見送られた。
パレスチナ寄りの過激派が公開劇場を爆破するという脅迫事件が起きたからである。その余波で、ジョン・フランケンハイマーの力作「ブラック・サンデー」(1977)も公開延期となった。
既に「エンテベの勝利」だけは劇場鑑賞していたが、試写会で本作を見た仲間からは断然、本作の方が面白いといっていた。後にビデオで見たが、やはりその意見は正解だった。
TVムーヴィーらしく大雑把さはあるが、地味ながら適材な俳優の起用と、若干のドキュメンタリー手法を用い、ヤマ場のアクションもメリハリがある。
両作ともアメリカ製作ゆえに、結果、イスラエル賞賛作品なのは間違いないので、政治や宗教に強い興味がある人間からすると、真逆の評価にもなろうが。
主役扱いであるラヴィン首相役のピーター・フィンチはこれが遺作となった。
「エンテベの勝利」ではこの役をアンソニー・ホプキンスが演じていて、年齢差が随分とあるなと感じるが、同じくイギリス系というのも、どこか深謀遠慮さを感じる。
主犯格のドイツ人テロリスト役も本作はホルスト・ブッフホルツで、あちらはヴィスコンティ映画の常連ヘルムート・バーガーというのも興味深い。
お互いの制作サイドの思惑も感じ取れる配役。本来であれば、両作を見比べるのも一興かもしれないが、その差は歴然なのでおススメはしない。
かなり偏った脚色も入っているが娯楽アクションとしてはそれなりにまとまっている作品。