スタッフ
監督:シドニー・ヘイヤース
製作:サミュエル・Z・アーコウ
脚本:ジョージ・バクスト
撮影:ダグラス・スローカム
音楽:ミュア・マシスン
キャスト
ロシター博士 / アントン・ディフリング
エリサ / エリカ・レンベルグ
ニコル / イヴォンヌ・モンロー
アンジェラ / ジェーン・ヒルトン
ウェッブ / ケネス・グリフィス
ヴァネー / ドナルド・プレゼンス
エイムス警部 / コンラッド・フィリップス
アンドリュース警部 / ジャック・ギリアム
メリナ / イヴォンヌ・ロメイン
日本公開: 1961年
製作国: イギリス ウィントル&パーキン・プロ作品
配給: 日本RKO
あらすじとコメント
ドイツ人俳優アントン・ディフリング。戦争映画で残忍なナチス将校役が多い脇役である。そんな彼が堂々主役を張った作品。かなりB級作だが、成程彼らしいと思わせるホラー・スリラー。
フランス、ボルドーイギリスで違法整形手術の挙句、錯乱した患者女性を精神病院送りにしたロシター博士(アントン・デフィリング)。その女性が、高官の妻だったことから、警察から追われる身となった。途中、検問の警官を轢き殺し、国内を捨て、助手と愛人と三人でフランスに渡った。
更にフランス奥地へ逃げようと走行中、とある農道で顔に傷を持つ少女と出会う。少女は小さなサーカスの団長ヴァネー(ドナルド・プレゼンス)の一人娘だった。ロシターは自分の技術で傷を取り除くと言い、見事手術に成功。喜んだヴァネーは、彼を共同経営者にと勧めた。提案を受け入れるロシターであったが、その晩、泥酔したヴァネーがサーカスの熊に噛み殺される現場に遭遇する。
一瞬、助けようとしたが・・・
狂人医師の自惚れが巻き起こす事件を描くスリラー。
顔と名前を変え逃走中の医師がサーカスの団長となる。しかも、顔に傷を持ち、それを罵られたことから客を殺した娼婦に手術を施し、一座の花形として迎え入れる。
その後の彼女との関係は想像に難くないだろう。しかも、一緒にイギリスから逃げてきた助手の妹も情婦である。
その10年後、大人気サーカス団となっているが、実は行く先々で傷を持つ女性を手術しては一座に引き入れ、益々、自分の腕に酔い、次々と情婦にしていた主人公。
だが、飽きると事故に見せかけて殺害もしていた。当然、警察もそれに感付き調査を始めるという内容。
過去のことは会話による説明で省略し、いよいよ警察が動きだすあたりからキチンとした進行になって行く。
サーカスという華やかなショー場面を取り入れ、その中で事故に見せかけた殺人が登場してくる。
そんなサーカス一座の女性は皆がセクシーである。ただし、全員が「整形美女」であり、そういう前振りがあると何ともそれらしく見えてくるから面白い。
低予算なので、醜いメークに予算をかけ、猛獣による殺害シーンなどはチープさが際立つが、編集と音楽でカバーするところなど、それこそB級の面目躍如。
イギリスで、この手の映画といえば、ドラキュラや狼男といった怪奇モノを得意としたハマー・プロ作品が有名だが、本作は違うところも興味深い。
やはり、毛色が違うのだ。イギリス映画らしいサスペンス・スリラーの作劇を踏襲している点も加味されよう。
ゴシック・ホラーと違い、妙なエロチシズムとサーカスというスペクタクル・ショーも上手く噛み合っていると感じた。
一部ファンの間では有名作らしいが、殆どの人は知らない作品だろう。
確かに、佳作、良作の類ではないが、『美容整形』という女性の願望を逆手に取り入れ、スリラーとして真面目に作られているのは評価できるB級作品。