スタッフ
監督:アーサー・ペン
製作:フレッド・コー
脚本:レスリー・スティーヴンス
撮影:ベヴァレル・マーレィ
音楽:アレキサンダー・カレッジ
キャスト
ボニー / ポール・ニューマン
セルサ / リタ・ミラン
ギャレット / ジョン・デナー
ブードル / ジェームス・コングドン
モールトリー / ハード・ハットフィールド
フォリアード / ジェームス・ベスト
タンストル / コリン・キース・ジョンストン
マクスウィーン / ジョン・ディークス
ヒル / ボブ・アンダーソン
日本公開: 1958年
製作国: アメリカ ア・ハロル・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
ポール・ニューマンの初期作品にしてみる。彼のメソッド演技が嫌というほど解る、ビリー・ザ・キッドと呼ばれた青年が悪の道へと踏み外していく生涯を描く正調西部劇。
アメリカ、ニュー・メキシコ馬を亡くし、くたくたになって歩いていた青年ボニー(ポール・ニューマン)は、牛を搬送中のイギリス人タンストル(コリン・キース・ジョンストン)に助けられた。
ボニーが11歳の時に殺人を犯していることを知っていた仲間は、見棄てるように進言するが、それでも仕事を与えるタンストル。
しかも、文盲のボニーに聖書を手渡し、これから言葉を教えていくと微笑んだ。初めて、他人の優しさに触れた彼は、心を許していく。
仲間も増え始め、人間として成長していくかのように見えた矢先、搬送する牛を安く売られては堪らないと、町を牛耳るボスが保安官をそそのかし、交渉に向かったタンストルを待ち伏せする。
結果、追いかけてきたボニーの眼前で射殺されてしまい・・・
義侠的復讐心から転落していく青年の人生を描く作品。
拳銃も携行せずに紳士然として、牛の群れを引き連れ商売を営むイギリス人。
殺人犯で文盲でもある青年は、恩人でもあるリーダーを殺害した保安官ら四人組に復讐を誓う。
無学ゆえに直情型な主人公。理解できる発想ではある。だが、仲間を引き連れ襲撃犯の二人を殺したことから転落の人生が始まって行く。
しかも、周囲の仲間や理解ある大人たちの制止も振り切り、復讐を続行して行こうとするから、仲間たちにも悲劇が襲いかかって来るという展開。
そんな本作だが、主人公が憑りつかれたような執念ではなく、直情型行動という弱点があり、途中から感情移入がしづらくなって行ってしまった。
やがて理解者であった男まで敵に回し、彼が保安官になったことから、益々追いつめられて行く進行なのだが、主人公の性格からすれば致し方ないと感じてしまい、素直に映画には乗って行けなかった。
若さゆえといえば聞こえは良いが、単に、いとも簡単に悪の道に進んでいく主役であるニューマンの鼻に付くメソッド演技がいただけない。
まだ若いからだろうが、頭で考えた演技プランが先行し、その後の実演技に繋がるというほんの僅かなタイムラグが周囲とのバランスを壊してしまい、ひとりでシェークスピア悲劇の主人公のような態で演技していくので、何とも妙な気分に陥った。
脇も上手いバイプレーヤーが出演していないので、彼の演技の緩衝材も存在せず、更に全体のアンバランスさが際立ってしまう結果と相成っている。
脚本も順を追って主人公の転落人生をなぞっていき、後に有名になるアーサー・ペン演出も凡庸さが勝る。
要は説明的過ぎるのである。確かに単純明快に悪童が無軌道に突っ走るだけなら、嫌というほど作られてきた内容であり、そこに新たな社会派的タッチを取り入れようとした点は評価できるが、やはり全体のバランスが悪いと感じる。
有名な悪党青年の人生を描いた割には、教則本のような印象を受ける凡庸作。