二ヵ月前か。区内循環ミニバスで運転手をしていた後輩と三十数年振りに再会した。
そんな彼から連絡が来て、一献傾けることに。元ガソリンスタンドの同業者で、自分より前に閉店した奴。尋くと当時からコックという夢があり、廃業後に修行でフランスに渡ったとか。すごい行動力だ。
帰国後はホテルの厨房から、やがて那須のホテルでコック長、それから独立して那須に居残り、パン屋を開業し、結婚して二人の娘に恵まれたと。地元では、それなりの有名店になったらしい。
それが、老齢になった母親を気遣い、閉業して帰京。彼は父親を早くに亡くしていて、スタンド時代も母親が社長だった。すごい決断力と行動力だ。
以前から第二種運転免許取得。要は、客を乗せられる免許を所持していて、ダメ元でバス会社の試験へ。結果、現在区内循環バスの運転手である。
自分のように、諦めで閉店したのではなく、夢を追い、実現させ、軌道に乗った自営業も母親のために潔く閉める。そんな彼に付いてくる家族も素晴らしいじゃないか。しかも、タクシーではなくバスという選択肢。
40年近くも前に、同じ大型繁忙店で修行していた時期もあり、その時から彼の評判は随分と高かった。当時から、出来の良い奴。
こちらなど正反対で、付いていくのがやっとで、半年で体重が10キロ落ちた時期でもある。間違いなく、あの頃から仕事が大嫌いになった。
それにしても随分と違う人生だ。当時はボンボン経営者が多い業界だったが、彼の話によると半分以上廃業したとか。
確かに石油に限らず、終身雇用と安心していた金融証券を含めて多くの業界が激変した。
皆、どうしているのだろうか。還暦を過ぎ、何とか頑張りながら生きているのかな。
頑張らないと決めた自分は、今後どうなっていくのかは不安ではあるが、そこで座右の銘さ。
『ケ・セラ・セラ』。なるようにしかならない。まあ、座右の銘で、これを公言する奴は少ないだろうな。
さて、真剣に旅先を考えるか。