朝イチの打ち合わせで編集部へ行く予定があった。ところが前日の夜、先方から連絡が来てキャンセルになった。
老母には事前にタバコ屋の店番を頼んでいたので、丸一日時間が空くことに。
それでも、一応、実家に行き自販機の補充だけはした。キャンセルになったと告げ、店番をする選択肢もあったが、たまさか、平日の休みも良いなと。
さてさて、どうするか。取り敢えず近くの安いカフェ・チェーンに行き考えた。
用もないのに、繁華街へでも行くと余計な買い物をしそうだ。ならば旅行に行った気分で午前中から軽い飲酒を兼ねたランチにでもするか。
徒歩圏内でと考えて、浮かんだのは三軒。そこで面倒臭い性格が発動。
考えたら三軒とも全く別方向。一軒は24時間やっている居酒屋。他の二軒は何時から営業か。スマホを持っていないので、簡単にチェックできず。もしかして平日休みではないだろうな、とか悪い方向ばかり考える。
外は曇り空で寒いのは承知。一番遠くて2キロはありそうな24時間営業の居酒屋はパスだな。他の二店のメニューを思い起こし、どちらが今日の気分かと。
で、一店に決めた。恐らく、開店は11時か11時半か。となると、後一時間はここで時間を潰すしかないのか。
店内は下町という場所柄もあろうが、こんな時間から何してるの的な客ばかり。当然、自分も同類だが。
高齢者が多く、スマホをいじる人間も少ない。昨今見なくなったスポーツ新聞を見ている老人も僅かであり、只々、そこにいる風情。しかも全員が独り客。
何だか人生そのものをリタイアした中高年らで、窓の外のどんよりとした寒空と相まって、場末ならではの極北感が淀んでいた。
そんな場所が似合う自分になったんだなと疲労感が纏わり着く。否や、違う。こちとら、これから酒飲みがてらのランチという楽しい小旅行だ。
でも、ここに後一時間はつらい。そうだ、どうせ小旅行の気分なら、店まで回り道して行くか。
敢えて、地元ながら行かぬ方向に足を向け散歩。目指す食堂に着いたのだが、11時チョイ前。まだ早い。でも、10分程度で開店しそうだ。
近くを流し、開店と同時に入店。小さな灯油の丸ストーブがあり、点火したばかりで店内は寒い。
それでもビールを注文し、壁に貼り付けてある手書きのメニューを眺めた。ここでも逡巡だと苦笑い。
軽い肴と定食のどれかだな。しばらくすると工事現場の作業員らが入って来て、こちらがビールを飲んでいるのを見た。それから地元の職工らしい人も数名。
何となくバツが悪い。しょうがない、帰って大掃除でも始めるか。やっと温まり始めた店を出たのは、まだ正午前だった。
店番をサボって人生を考えるには良い日だと思い込もうとした師走の平日。