ザ・マン/大統領の椅子(未) – THE MAN(1972年)

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スタッフ
監督:ジョセフ・サージェント
製作:リー・リッチ
脚本:ロッド・サーリング
撮影:エドワード・C・ロッセン
音楽:ジェリー・ゴールドスミス

キャスト
ディルマン大統領 / ジェームス・アール・ジョーンズ
トーレイ補佐官 / マーティン・バルサム
ワトソン / バージェス・メレディス
カルヴィン副大統領 / リュー・エアーズ
イートン国務長官 / ウィリアム・ウィンダム
ケイ / バーバラ・ラッシュ
ホイーラー / ジョーグ・スタンフォード・ブラウン
ゲイナー / サイモン・スコット
ジャック・ベニー / 彼自身

日本公開: 未公開
製作国: アメリカ ABCサークル・フィルム作品
配給: なし


あらすじとコメント

前回は、大統領「候補」選びで、今回はズバリ大統領が主役の作品。原題もあちらは「THE BEST MAN」で、今回は「THE MAN」。『BEST』が外れただけでどれほど違うのか。元はTVムーヴィーながら、良作。

アメリカ、ワシントンドイツを訪問中の大統領や下院議長らが、フランクフルトの宮殿での崩落事故により全員が死亡したという情報がイートン国務長官(ウィリアム・ウィンダム)の下に飛び込んできた。

国務長官は即座にカルヴィン副大統領(リュー・エアーズ)に大統領代行として対応に当たって欲しいと依頼する。しかし、当の副大統領は脳卒中を患っており車イスでしか動けないほどの状況であった。となれば国務長官の自分が臨時大統領だと確信したが、トーレイ大統領補佐官(マーティン・バルサム)が、即座に否定した。僅か前に『大統領継承法』が議会承認を受け序列が変更していていると。

それは副大統領、下院議長、上院議長の順番であり、国務長官はその次になっている。驚く国務長官。

何故なら上院議長は空席で臨時として就任していたのは黒人のディルマン(ジェームス・アール・ジョーンズ)だったのだ・・・

棚ボタでアメリカ初の黒人大統領になった男の姿を追う佳作。

現在では、既にバラク・オバマがアメリカ初の黒人大統領に就任しているので、絵空事ではなく現実となっている。

しかし、これはポリティカル・フィクションとして描かれた作品であり、脚本を書いたのは「キューバ危機」にインスパイアされた『核戦争三部作』の一本「五月の七日間」(1963)という力作や、「猿の惑星」(1968)を書いたロッド・サーリング。

監督は、やはりSF映画の秀作で、冷戦下の米ソが秘密裏に開発した巨大コンピューターが、やがて、その2台により人類が危機に瀕して行くという「地球爆破作戦」(1970)のジョセフ・サージェント。

この手のSFというか、政治系フィクションが好きな人間には堪らない制作陣に加え、キャストでも、ホワイトハウス内での政治スキャンダルを描いた「野望の系列」(1961)で、本作と同じくカギを握る副大統領役を演じたリュー・エアーズが登場してくるのも興味深い。

内容は、いきなり黒人大統領の誕生により困惑する議員たちの姿であり、当然、快く思わない人間が圧倒的でもあり、何とか引き摺り降ろそうと画策していく展開。

それは当の本人も自覚しており、選挙で選ばれたのではないので、国民も困惑しているに違いないと。

そこに、南アフリカ共和国を連想させるアパルトヘイトの国で起きた政府要人暗殺未遂事件の犯人と思しき留学生が、同じ黒人だからと助けを求めてくるに至り、ホワイトハウス内の白人議員から国民を巻き込んでの騒動に発展していく。

何よりもオバマ大統領よりも大統領に見える思慮深く落ち着いた雰囲気を醸すジェームス・アール・ジョーンズの存在感が素晴らしい。

棚ボタで就任する冒頭から、老獪議員らによる「陰湿なるいじめ」が繰り広げられる前半部分が圧倒的に面白い。

だが、黒人青年が登場してくるあたりから、妙なヒューマン・ドラマになるのが残念でもある。

ただし、TVムーヴィーとして制作されたので、かなり奇抜な落とし所は望めないだろうなとも感じたが。

それでも、アメリカでは劇場公開に至った作品であるということは、それだけの力作であると位置付けられる佳作。

余談雑談 2018年12月22日
朝イチの打ち合わせで編集部へ行く予定があった。ところが前日の夜、先方から連絡が来てキャンセルになった。 老母には事前にタバコ屋の店番を頼んでいたので、丸一日時間が空くことに。 それでも、一応、実家に行き自販機の補充だけはした。キャンセルにな