スタッフ
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
製作:ドア・シャリー
脚本:ロバート・ピロッシュ
撮影:ポール・C・ヴォーゲル
音楽:レニー・ヘイトン
キャスト
ホリー / ヴァン・ジョンソン
ジャーヴィス / ジョン・ホデアック
ロドリゲス / リカルド・モンタルバン
スタザック / ジョージ・マーフィ
レイトン / マーシャル・トンプソン
スタンドフィールド / ドン・テイラー
キニー軍曹 / ジェームス・ホイットモア
ベティス / リチャード・ジャッケル
スパドラー / ジェローム・カートランド
日本公開: 1950年
製作国: アメリカ ロウズ・インコーポレーション作品
配給: セントラル
あらすじとコメント
「火曜日ならベルギーよ」(1969)でバストーニュを訪れていたドイツとアメリカの元兵士の観光客が、お互い同行女性に自慢げにここで戦闘したとすれ違う小さなエピソードが登場した。実は、そこが一番笑えた場面で、そこから繋げた。正に、し烈な戦いを地味ながらしっかり描いた佳作。
ベルギー、バストーニュ1944年のクリスマス間近。フランスに駐留中で、念願のパリでの休暇を期待していたアメリカ軍空挺部隊に、急遽、トラックによる移動命令が発令された。
病院から戻ったばかりのホリー(ヴァン・ジョンソン)や、元記者のジャーベス(ジョン・ホデアック)、新参で誰からも相手にされない兵士など、個性的な兵士ばかりの小隊。
長い移動の果て、彼らが配属されたのは、あり得ないはずのドイツ軍による猛反撃が開始された隣国ベルギーに位置するバストーニュ近郊の森。しかも情報量が決定的に乏しく、塹壕を掘っての待機命令だったが、戦況はまったく解らない。
しかも、濃霧に覆われ空軍による応援も期待できず、その上、雪まで降って来て・・・
絶望的な状況に置かれた兵士らをリアルに描く佳作。
本来は輸送機から降下して攻撃をするパラシュート部隊。その中の一小隊が、陸戦隊として森に配置され苦戦を強いられていく姿を丁寧に追っていく内容。
突然の休暇取り消し命令に混乱しつつ、文句を言いながらも臨機応変に対応する兵士たち。
森の中に狙撃兵がいると知れば、士官、下士官は自ら階級章を剥がす。狙撃対象の最優先になるからだ。
気温が氷点下にまでなるので、銃の点検を怠ると氷結し、いざというときに使用不可になるなど、各エピソードが実話に基づいているので説得力がある。
そんな彼らのいるバストーニュというのが、主要道路が7本も集まる要衝なのだが、それすら知らない兵士が圧倒的。
ドイツ側も敗戦濃厚で、そこが最後の大反撃と捉えている作戦でもあった。
そのため後方攪乱を企て米兵に変装した特殊部隊も紛れ込んでおり、混乱に陥らせている模様。しかし、それすら噂の伝聞として対応せざるを得ないほど劣悪な情報不足の中での戦い。
そういった断片的な情報から、濃霧や積雪といった厳しい自然現象、それにより弾薬などの物資補給も滞ってくる。当然、仲間にも何名も犠牲者がでていく展開である。
敢えて場所的展開を限定したことで、観客も絶望的な状況を肌に感じながら、展開に参加していく作劇。
面白いのは、本作を製作したMGMは、豊富なスター群と派手なミュージカルなどで一世を風靡していた時期でありながら、これだけ地味なキャストと低予算で作ったこと。
しかも、それが見事にハマり、兵士たちの設定も、腕時計を故郷時間のままにして行動する兵隊、補充兵で名前も覚えて貰えない者、サイズ不足で寒冷地用のオーバー・ブーツがなく、寝るときは一々、濡れた軍靴を脱ぐ兵士など個性的で同じ軍装ながら、俳優たちの演技もキャラが際立って混乱させない。
また主役のヴァン・ジョンソンは同じ戦闘設定で、逆にドイツ側から描いた「前線命令」(1959)にドイツ攪乱部隊の指揮官役で主演しているのも、映画ファンとしては面白い。
本作は低予算で地味ながら、実にリアルで良く出来た戦争佳作である。