ドレッサー – THE DRESSER(1983年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:ピーター・イエーツ
製作:ピーター・イエーツ
脚本:ロナルド・ハーウッド
撮影:ケヴィン・パイク
音楽:ジェームス・ホーナー

キャスト
ボンゾ / アルバート・フィニー
ノーマン / トム・コートネイ
オクセンビー / エドワード・フォックス
ボンゾ夫人 / ゼナ・ウォーカー
マッジ / アイリーン・アトキンス
フランク / マイケル・ガフ
イレーネ / キャサリン・ハリソン
ヴァイオレット / ベティ・マースデン
リディア / シーラ・リード

日本公開: 1984年
製作国: イギリス W・フィルム・サーヴィス他 作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

今回もロンドンを舞台にした中年男同士の同性愛的葛藤を描く舞台劇の映画化作品。名優二人による、鬼気迫る演技合戦が見もので、違う意味での「シャークスピア悲劇」を想起させる秀作。

イギリス、ロンドン第二次大戦下でドイツ軍による空爆が激しさを増していた頃。シェークスピア作品のみを巡業上演する劇団があった。

座長はボンゾ(アルバート・フィニー)で、独裁者というか、絶対君主のような男である。そんな彼に20年以上も師事する付き人のノーマン(トム・コートネイ)。ノーマンは同性愛者であり、恋人のように座長の無理難題からワガママを聞き、何があっても付いて行こうとしていた。

しかし、老境に差し掛かったボンゾが変調をきたしてきた。王様のような立ち振る舞いから、ことあるごとにシェークスピア劇の台詞を引用し劇団員たちを叱咤してきたが、突如、台詞がでてこないと嘆き、自分はもう舞台には立てぬと嘆き始めた。どうやら躁鬱病の気配もある。

しかし、その日は「リア王」の初日であり、券は完売。長年付き添う女性マネージャーやら、妻、共演者らも不安げである。時間を追うごとに座長の緊張は極に達していき、劇場も劇団も多額の負債を背負うことになるキャンセルも現実味を帯びだす。

いよいよ、無理かと誰もが諦めかけるが、ノーマンが、絶対に舞台に立たせると鬼気迫る顔で言い放った・・・

絶対君主の男と付き人を軸に描く見事なる人間ドラマの秀作。

長年「シェークスピア劇」を上演してきた有名劇団。地方にも名声は轟き、行く先々で大声援の人気でもある。

そこの座長が神経衰弱になったことから激変が起きて行くという内容。

冒頭、主人公が、まるで劇中のリア王そのもののように悠然と周囲がひれ伏すものだと自惚れて振る舞う姿から始まる。

そして泰然自若というか、乗車予定の列車発車時刻を過ぎても自分のペースでゆっくりと歩き、付き人が車掌に少し待ってくれと懇願するものの、当然、戦時下であり、定時発車するが、そこは舞台俳優で、駅構内に響き渡る大きな声で、王のように発車を止めさせる。まさしく役柄が乗り移ったような態で。

プライベートでも様々なシェークスピア劇の主役のキャラクターが入り混じり、パラノイアとも思える男。そして女好き。

そんな主人公が弱音を吐くから、劇団員にも溜まっていた鬱憤が吹きだし始める。

それでも徹底的に庇い、叱咤もしつつ、何とか幕を上げさせようとする健気な、いかにもの『オネエ系』ゲイの付き人。

この二人の演技合戦が見もの。女好きだが、精神的に脆くなっており、どこか『精神的同性愛者』を感じさせる座長。付き人は自分の個性をストレートにぶつけたり、なだめたりしながら、壮絶な会話劇として進行していく。

他にも、微妙な立場の女性マネージャーや、シニカルな劇団員、力量はないのに長年所属する老優などのスタンスも、まるで20世紀半ばに蘇ったシェークスピアの新作を見ているような錯覚に陥っていく。

それはシェークスピア劇を熟知した作家の力量によるものであり、故にイギリスだからこそ生まれた名画といえよう。

地味ながら映画ファンの心を鷲掴みにする見事な作品である。

余談雑談 2018年9月22日
実家近くの洋食屋。40歳過ぎの下町らしからぬ夫婦が営み、三度ほど行ったが、自分の嗜好とは違うので遠退いてた。 元々は数年前に、浅草雷門横で長年営業して来た「とんかつ屋」を閉店した老夫婦が自宅の一階で手慰み程度で再開業した店だった。 昔ながら