スタッフ
監督:ボブ・フォッシー
製作:ロバート・アーサー
脚本:ピーター・ストーン、ニール・サイモン
撮影:ロバート・サーティース
音楽:サイ・コールマン
キャスト
チャリティ / シャーリー・マクレーン
リンドクィスト / ジョン・マクマーティン
ヴィダル / リカルド・モンタルバン
ニッキ─ / チタ・リヴェラ
ビッグ・ダディ・ブルーベック / サミー・ディヴィスJr
ウルスラ / バーバラ・ブーシェ
ヘレン / ポーラ・ケリー
ハーマン / スタービィ・ケイ
チャーリー / ダンテ・ディ・ピサロ
日本公開: 1969年
製作国: アメリカ ユニバーサル作品
配給: ユニバーサル
あらすじとコメント
前回扱った「カビリアの夜」(1957)のリメイク。しかも、ミュージカルであり、いかにも当時のブロードウェイ舞台劇と感じる異色作。
アメリカ、ニュー・ヨーク客と踊ってチップを貰う場末のダンス・バーに勤めるチャリティ(シャ-リー・マクレーン)は、ヒモみたいな男に惚れ少女のように結婚を夢見ていた。
しかし、セントラル・パークの池に架かる小さな石橋で、ありったけの金を持って婚前旅行に行こうとしたとき、相手の男に金だけ取られて、池に突き落とされてしまう。
傷心して店に戻ると、同僚たちに足を滑らせて落ちて彼の所為ではないと言い張って・・・
オツムが些か弱いが、お人好しの女が普通の幸せに憧れる姿を描くミュージカル。
原作がフェリーニの「カビリヤの夜」(1957)だけに、いかにも『明るく健全』なアメリカ製ミュージカルとは違うので驚いた。
場末のダンス・バーに、8年も勤めるヒロイン。男運はまったくない。というよりも、ダメ男に貢いでは棄てられるを繰り返してきたのに、一向に学習能力がないという設定。しかし、本人は常に切り替えが早く、前向きだ。
そんな役を歌って踊れるマクレーンが演じる。しかも彼女は当時、他の映画でも、キュートでコケテッシュな役柄ばかりを演じてきた。つまり、ハマリ役といえよう。
元々、ブロードウエイのミュージカルなので、数多くの楽曲が登場してくる。個人的には、割と好きな楽曲が多い。
ただし、オリジナル舞台に近いのか、上映時間は2時間半ある。それが、眼の前でリアルに繰広げられる舞台で感じる長さとは違い、映画として作ると冗漫な感じが強まるのも事実。
それを意識して、ダンサー上がりの監督であるボブ・フォッシーは、映画としての映像表現に苦心しているのが完全に見て取れる。
例えばミュージカル・ナンバーでの、舞台では絶対に見られないダンサー越しに踊る主人公であったり、アップやロング・ショットを短いカッティングで小刻みに変えるとか、ミュージカル映画の歴史を変えた「ウエストサイド物語」(1961)の流れを汲み、設定も同じくニュー・ヨークということもあってか、セントラル・パークなど街角でのロケもフンダンに登場する。
確かに幾つかのショットや場面転換などでキレを感じさせるが、いかんせん「長さ」の感覚が勝るのがマイナスである。
もう少しミュージカル・ナンバーを厳選して、冗漫さを緩和しても良かったのではないかとも感じた。
そして、何よりもアメリカ映画らしくないのは原作がイタリア人ゆえか、単純なる大団円ではないこと。このあたりも、「ウエストサイド物語」の影響を強く感じた。
場末に生きる幸薄いダンサーが次々と男と知り合い、その都度、何らかの苦労をして成長しているような、していないような、という話を延々と見せられる。そして、大いなるハッピー・エンドでもない。確かに原作の「カビリアの夜」に近いのだが。
ゆえに好き嫌いは分かれよう。ただ、面白いのは発売されているDVDには別バージョンのエンディングが収録されていること。個人的には、そちらで劇場公開されていたら、もう少し好印象になっただろう。