赤い砂漠 – IL DESERTO ROSSO(1964年)

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スタッフ
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
製作:アントーニオ・チェルヴィ
脚本:M・アントニオーニ、トニーノ・グエッラ
撮影:カルロ・ディ・パルマ
音楽:ジョヴァンニ・フスコ

キャスト
ジュリアーナ / モニカ・ヴィッティ
ゼラー / リチャード・ハリス
ウーゴ / カルロ・キオネッティ
リンダ / セニア・ヴァルディーニ
エミリア / リタ・ルノワール
マックス / アルド・グロッティ
ヴァレリオ / ヴァレリオ・バルトレッシ
寓話の女児 / エマニュエラ・パーラ・カルボーニ
望遠鏡を見る男 / ジュリアーノ・ミッシリーニ

日本公開: 1965年
製作国: イタリア、フランス チネリッツ作品
配給: 東和


あらすじとコメント

「愛の不毛」を描き続けたミケランジェロ・アントニオーニ監督。今回も人妻の虚無的絶望を怖いほど際立たせた秀作。

イタリア、ラヴェンナ港に近い工業地帯。そこに亭主を訪ねてジュリアーナ(モニカ・ヴィッティ)が息子を連れてやってきた。

だが、彼女はどこか不安げで、挙動不審にも見える。何故なら彼女は交通事故に遭い、その後遺症なのか、ノイローゼ状態が続いているからだ。

今日も、別に用はないのだが、息子を連れ亭主に会いに来ただけのようだった。だが、工場はストライキ中で、どこか殺伐とした雰囲気。そんな空気が更に彼女を不安定にさせる。それでもジュリアーナは亭主を見つけた。その傍らには昔の友人だというゼラー(リチャード・ハリス)が佇んでいた。彼は南米の僻地に発電所を作るために作業員を募りにやって来ていたのだった。

ゼラーは、ひと目で彼女の精神状態が悪いと察知して・・・

人妻の得もいえぬ不安と虚無感を描くドラマ。

交通事故の後遺症からかノイローゼになった人妻。そんな彼女に何かしやれないかと接する心優しい男。

そして彼女を取り巻く仲間たち。場所は霧の立ち込める冬の港町。

何とも複雑というか、沈殿した雰囲気が全編を覆っている。

ハッキリ言って観ていて楽しい作品ではない。これはアントニオーニ全般に通じるものであるが、多くの日本人には受け入れ難い作品群でもあろうか。

しかも、本作はアントニオーニの初カラー作品。

それを敢えて、霧の立ち込める情景で色調を抑制し、逆に派手な原色の『赤』をハッとするほど際立たせる手法。

時系列的にアントニオーニ作品を見てきた人間からすれば驚きでもあり、彼らしいとも受け取れるだろう。

兎に角、ノイローゼのヒロインの心模様を描いていくので、どの場面も虚無的であり、絶望感に覆われている。

大したことではないが、亭主らしい無関心が、重くヒロインにのしかかると感じさせる場面など、何ともこちらの居心地の悪さを増幅連鎖させていく。

しかし、映画的表現としては、見事であり、人間とは悩み、その心の渦が途切れることはないという、情緒の不安定さを見事に映像化している。

きっと人間は死ぬまで何かしらで悩み、それが尽きることがないという事実を情緒不安定な人間をメインに据えることで、時間軸を凝縮させて見せ付けてくる。

心優しい男が登場し、彼なりに何とか関係を構築しようとするが、結局、心は決して、結びつき合えないという不毛が見事に浮かび上がる。

ヒロインを演じるモニカ・ヴィッティの存在感が圧倒的であり、恐怖感すらを覚醒させられる。

本作が初カラー作品であり、また、最後のイタリア製作作品でもあり、アントニオーニを語る上で外せない作品。

ただし、息が詰まるほど重苦しい映画である。

余談雑談 2018年5月19日
売上げ減が続く実家のタバコ屋。それでも義理堅く、決まった銘柄を毎週1カートン買ってくれる客がいる。 ただし、飲食店で日曜の昼頃にお届けに行きながら、一杯飲むので儲けはない。それでも、継続は何とやらである。 その店に、時々、老芸人が来る。そこ