スタッフ
監督:ルイス・マイルストン
製作:ルイス・マイルストン
脚本:ジェームス・R・ウェッブ
撮影:サム・リーヴィット
音楽:レナード・ローゼンマン
キャスト
クレモンス中尉 / グレゴリー・ペック
ラッセル中尉 / リップ・トーン
オオハシ中尉 / ジョージ・シバタ
ディヴィス中佐 / バリー・アトウォーター
フォーストマン二等兵 / ハリー・ガーディノ
フランクリン二等兵 / ウディ・ストロード
ヴェリー二等兵 / ロバート・ブレイク
フェンダーソン伍長 / ジョージ・ペパード
マーシャル中尉 / マーティン・ランドー
日本公開: 1959年
製作国: アメリカ メルヴィル・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
前回の「トコリの橋」(1954)は、朝鮮戦争に於けるアメリカ海軍所属の戦闘機パイロットが活躍する作品。今回は陸軍の絶望的な戦いを描く、実話の映画化。
朝鮮半島 板門店1953年4月、国連軍と中朝連合軍の間で休戦交渉が行われていたが、条件が折り合わず難航を極めていた。
その頃、板門店から100キロあまりの場所にある「ポークチョップの丘」では、米軍と中国軍の間で、お互いが奪取し合う激戦を繰り広げていた。しかし、その丘は基地や要衝といった何ら重要なポイントではなかった。
現在は中国軍が奪取していたが、クレモンス中尉(グレゴリー・ペック)率いる中隊に再奪取命令が下った。休戦間近と思っていた兵士たちは意気消沈。それでもクレモンスは、他の2中隊と共に丘の奪取に向け出発した。
夜が明ける前に頂上の陣地を奪取しなければ作戦は失敗すると踏んでいたが、現地に着くと想像以上な敵の攻撃が開始され・・・
何の価値もない場所を巡る、壮絶な戦いを描く佳作。
休戦調停中の両陣営首脳部。条件交渉のためなのか、価値のない丘を何故か気にしているようだ。一方で、そこで戦う兵士たちは悲惨である。
要は、下の人間らのみが艱難辛苦を受けるという、ありがちな内容ではある。
その姿を丁寧に追う進行。主人公は実戦経験が少ないのか、部下たちからは指揮能力は未知数だと思われている。
だが、それは杞憂であるとすぐに解る。真面目で冷静であり、大袈裟に感情を露わにせず、沈着型指揮官。
ところが、塹壕が張り巡っている丘の頂上部分は戦いづらいのである。様々な作戦を実行するが犠牲者は続出する一方という展開。
敵の無線妨害もあり、別な隊と連携も取れないので、混乱し、益々、絶望的な状況に追い込まれて行くのである。
それでも、諦めない主人公らの部隊。再三の援護要請も上層部に却下される。というよりも直属の上官らも、所詮、宮遣いであり、主人公らの置かれている立場は理解できるが、交渉が最優先の上層部は、そんな些末なことには一々、対応する訳もない。
続々と戦傷者や戦死者がでる中、一進一退の攻防が繰り広げられて行く。観ていてかなり追い込まれていく作劇である。
主役のグレゴリー・ペックは大スターであったが、脇を固める役者陣も、後に目立つというか、何とも味わい深い役者がかなり出演している。
ただし、白黒スタンダード画面で、同じ軍服を着用し、泥まみれの容姿になるので、判別は難しいかもしれない。
そんな脇役陣の中で興味深いのは、第二次大戦では半敵であった日系二世のジョージ・シバタが、かなりオイシイ役どころで主演していることだろうか。
また、常に心理的にアメリカ軍を追い込むために英語放送を続ける中国側のアナウンサー軍人の存在も忘れ難い。
反戦映画の秀作「西部戦線異状なし」(1930)を撮ったルイス・マイルストン監督の晩年の矜持を感じられる、地味ながらも、バランス良くまとまった作品である。