まごころを君に – CHARLY(1968年)

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スタッフ
監督:ラルフ・ネルソン
製作:ラルフ・ネルソン
脚本:スターリング・シリファント
撮影:アーサー・J・オーニッツ
音楽:ラヴィ・シャンカール

キャスト
ゴードン / クリフ・ロバートソン
アリス / クレア・ブルーム
アンナ / リリア・スカラ
ネマー博士 / レオン・ジャニー
アップル婦人 / ルース・ホワイト
バート / ディック・ヴァン・パタン
ギンピー / スキッパー・マクナリー
ジョーイ / ウィリアム・ドワイヤー
ハンク / バーニー・マーティン

日本公開: 1969年
製作国: アメリカ セルマー・ピクチャーズ作品
配給: 松竹映配


あらすじとコメント

障がい者が主役の作品。今回はSfベースながら、人間の尊厳を闊達に描いた作品。

アメリカ、ボストンパン工場で雑用係として勤務するゴードン(クリフ・ロバートソン)は、立派な青年ながら、知能は未就学児のままの知的障がい者である。同僚たちからは、常にからかわれるが、本人は素直な性格で、自分に絡んで来てくれることが嬉しかった。

一方、最新の脳外科手術で知的障がい者を急成長させようとするグループがあった。数名の候補者がおり、ゴードンもその一人である。彼の担当は心理学者アリス(クレア・ブルーム)だ。

当然、人間に手術する前にマウス実験が行われていて、ゴードンは「アルジャーノン」というマウスが比較対象だった。マウスと同じ条件での迷路ゲームを試験させられるが、一勝も出来ないゴードンは落ち込む。それでも、アリスは彼を励まし続けた。

やがて、彼が人体手術の第一号と決まって・・・

人間性を剥奪してまで進歩させようとする医学を懐疑的に描く佳作。

成人でありながらIQ70の主人公。純真無垢というか、それでもできることはキチンとしようとする。

そんな青年を完全なる人体実験の対象として研究して行く医師チーム。とはいっても、三人中、そこまで冷徹に研究材料として割り切って見ているのはリーダーの脳外科医だけで、他の二人は違う。

それでも、人類の進歩のためには画期的なプログラムであり、重要だと認識しているというエリート階級的発想の人間たちではある。

グループは、先ず主人公にマウス相手に競争力を煽り、主人公の居住地域であるボストンの数々の情報をインプットさせようとする。

何故なら、彼は、実験材料になる前から、ひとりで市内バスに乗り、街の解説を聞くのが好きだったから。

そういうことも織り込み済みで、主人公の状態を観察して行く。

観ているうちに、やはり、胸が痛くなってくる。術後、急成長を見せるのだが、それはあくまで脳内のことだけあり、感情は追い付かないから、別な問題も生じて来るという展開。

生物としての人間の本能と頭脳だけで考える知性の差異。肉体的変化や感情の起伏があるのが人間であるのだが、それよりも知性こそが人間の叡智という価値観。

医師というエリート意識が高い一部の人間からすれば、市井の人間よりも劣ると思っている知的障がい者のひとりなど、人類の中の数の内に入らないのだろう。

何ともイヤミな人種であるが、脳だけが急成長する主人公は、やがて医師たち同等の知識を身に着けていく。

あくまで「知識」であり、「知恵」でないところに、主題が見え隠れする。

何といっても、主役を演じるクリフ・ロバートソンの演技が印象的である。アカデミー主演男優賞を受賞したのも頷ける。

しかもその年の主演男優賞は「愛すれど心さびしく」(1968)のアラン・アーキンと競い勝ちしたのも興味深い。

知能が急発達した主人公が発する「身がい者は笑われないが、知的障がい者は笑われる」という台詞が、こちらの胸にも刺さってきた。

何もエリート層の人間のみならず、市井の人間だって、心に何かを隠し持っていると悟らせてくれる佳作。

余談雑談 2017年12月16日
休日の午後。自室で珈琲でも飲むかと準備しながら画面を背にして、録画済みの旅番組を流していたときのこと。 内容は、栃木県から福島県までをローカル線で巡るもので、丁度、日光東照宮の場面だった。そこで、ナレーターが『三猿』の説明をした時、「見ざる