鏡の国の戦争 – THE LOOKING GLASS WAR(1968年)

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スタッフ
監督:フランク・ピアソン
製作:ジョン・ボックス
脚本:フランク・ピアソン
撮影:オースティン・センプスター
音楽:ウォーリー・ストット

キャスト
レイザー / クリストファー・ジョーンズ
エイヴリー / アンソニー・ホプキンス
若い女 / ピア・デゲルマルク
ルクレール / ラルフ・リチャードソン
ロンドンの女 / スーザン・ジョージ
ハルダイン / ポール・ロジャース
トラック運転手 / マイケル・ロビンス
東欧側高級諜報部員 / シリル・シャップス
エイヴリー夫人 / アンナ・マッセイ

日本公開: 1970年
製作国: アメリカ フランコヴィッチ・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

冷戦下での諜報活動。今回は、非情な世界であることに変わりはないがアクションやヴェテランの哀愁ではなく、どこかニュー・シネマ的な印象を放つ異色のドラマにしてみる。

イギリス、ロンドン情報局にフィンランドで新型ロケットの写真を撮影したスパイが殺害されたという一報が入る。フィルムも未発見であり、東ドイツが新型ロケットを間違いなく開発したのかを精査したいイギリス情報部は、次に送り込む諜報員選定に入った。

だが、適任者がおらず、結局妊娠したイギリス人の恋人に会いたいがために密入国を企てたポーランド人の青年レイザー(クリストファー・ジョーンズ)を市民権をエサに諜報員に仕立てることにする。

当然、内部で反対の声も上がるがトップが押し切り、部員エイヴリー(アンソニー・ホプキンス)に指導命令を出したが・・・

駒として利用される若者の潜入日常を追うドラマ。

市民権をエサに6週間の敵国潜入で証拠写真なり、確証を無線連絡せよと言われる主人公。

負け犬的根性の若者であり、妊娠した恋人への感情よりも生まれて来る赤子の父親になりたいというタイプ。

どこか本末転倒な価値観であり、愛国心など持ち合わせない。ただ、それなりのプライドもあるのかスパイになること決める。

しかし、俄か仕立ての教育訓練。イギリスの担当官も困惑するし、当の本人も混乱していく。

それでも上層部は冷静に若者たった一人に無謀とも呼べる任務を遂行させようとする。しかも当初と内容が微妙に変化していく。

初めは小型拳銃携行だったのが、戦争行為誘発としてナイフ一本にさせられ25年も前の無線機で通信しろと。それで雪原の国境の鉄条網を破り潜入しろというのだ。

もう、成否は見えているようなものだ。それでもイギリス諜報部の潜入事実という見栄が勝り、極秘指令として遂行させようとする。先任者の撮影フィルムが回収されていないからだが、その割に、ずさんさが際立つ。

主人公は潜入直後に国境警備隊の青年をナイフで殺害するが、自分も右手に傷を負ってしまう。敵陣内では、すぐに何者かが密入国し、兵士殺害とのニュースが駆け巡っている。

知らぬは主人公ただ一人。その中で遠い場所まで移動しなければならないのだ。

通りかかるトラックの運転手、荒野に佇む鄙びたカフェの女主人、小さな女の子を連れた金髪美女などが登場してきて、まるで「アメリカン・ニュー・シネマ」的ロード・ムーヴィーの態を成していく。

ただし、そこには常にキナ臭く血生臭さが付き纏う展開が待ち受けるが。

敵当局も主人公を特定しつつ、目的を見極めるためにわざと泳がせている。青年もそれを知ることになるが、だからといって何も出来ない閉塞感。

各国の上層部の見栄先行の愚かさと生きる目的を見失っていく青年。

荒涼としたニュー・シネマの自分探し的印象が勝る作品。

余談雑談 2022年8月6日
灼熱地獄の東京。大した用事でもないのに外出し、結局、暑さに負けてタクシーを使うことにした。 またもや寄る年波を痛感することに。「どちらまで」と運転手に言われ、ふと目的地の画像は鮮明に浮かぶのだが何通りの何という交差点だったかが浮かばない。有