スタッフ
監督:ジャック・ヘイリーJr
製作:デヴィッド・ニーヴンJr、ジャック・ヘイリーJr
脚本:ジャック・ヘイリーJr
撮影:アンドリュー・ラズロ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
キャスト
彼自身 / フレッド・アステア
彼自身 / ジーン・ケリー
彼自身 / レイ・ボルジャー
彼自身 / サミー・デイヴィスJr
彼自身 / ミハイル・バリシニコフ
彼女自身 / ライザ・ミネリ
彼自身 / ボビー・バン
日本公開: 1985年
製作国: アメリカ ヘイリー&ニーヴン作品
配給: UIP
あらすじとコメント
「ザッツ・エンタテイメントPART3」(1994)同様、ミュージカルの歴史と勉強に持ってこいの集大成的な作品にする。前回のシリーズとは違い、MGM作品以外の異なる映画会社や、時代の変化を汲む多様なミュージック・ビデオまで含んだ実に楽しめる作品。
アメリカ、ニュー・ヨーク
サウス・ブロンクスで黒人少年らに大人気のブレイクダンスを眺める一人の老人がいる。ジーン・ケリー(彼自身)である。
彼はミュージカル映画の生き証人として、20世紀初頭のサイレント作品から、映画と舞踊の歩んできた流れを振り返りだす・・・
映画とダンスがどのように紡がれてきたかを紹介する作品。
アフリカから日本までを含む世界中の民族の群舞踊がビートを刻む音楽で映し出されていき、ダンス映画の名場面がリズムに乗り、テンポ良く登場してくる冒頭。
まさしく「ザッツ・エンターティンメント」(1974)から始まった観客の心を高揚させ、一気に夢の世界へと導く儀式の態で幕を開けるのでワクワクさせられる。
そしてジーン・ケリーが登場してダンスと映画はどのような変遷を遂げたかを解説し始める。
始めは黒人少年らによる路地裏でのブレイク・ダンスをにこやかに見つめるケリー。彼自身、肉体を張ったアクロバティックなダンス・ナンバーを得意とした有名ミューカル・スター。成程の起用だなと。
映画が発明され、記憶媒体として活用が始まる。世間ではチャールストン・ダンスが全盛を迎え、サイレント映画ながら流行を取り入れて一応の「ミュージカル」的レヴュー映画が量産されるようになる。
しかし、当時の技術や演者たちは素人に毛の生えたような人間ばかりで、失笑を禁じ得ない場面が続くのが面白い。
確かにアクション活劇やコメディでも、カメラの精度の問題やら未知の分野の仕事ゆえに一応のプロの役者やダンサーも混乱を極めたであろう空気が伝わってくる。
そしてミュージカル映画を変えた天才的振付師バズビー・バークレイが起こした革命的仕事を紹介していく進行。
彼の万華鏡のような幾何学模様を中心とした集団群舞を描くことで映画と踊りが見事に融合されて大人気を博した。
続いては、有名スターの登場である。紹介者はサミー・デイヴィスJrに代わり、登場してくるのはフレッド・アステア。
確かに「ザッツ・エンターティンメント」シリーズでも一定量で紹介されるミュージカル映画を代表するレジェンドだ。
ただし本作は制作会社が違い、紹介されなかったジンジャー・ロジャースとのRKO映画時代の作品が登場してきて楽しませてくれる。何せビデオでは鑑賞済みだが、劇場の大きなスクリーンで二人の白黒ダンス場面を初見したときは総毛立った。迫力が違うのだ。
それ以降も生き証人たちが登場してきては、その後のミュージカル系映画の流れを綴っていく。
つまり、かなり「ザッツ・エンターティンメント」シリーズを意識して、敢えて異なる印象を与えようとする苦心が見られる。
ただし、それでも充分に楽しくソ連のバレエ・ダンサーのミハイル・バリシニコフが登場したり、黒人のアクロバティック系ダンサーから、ミュージカル映画の歴史を変えた「ウエスト・サイド物語」(1961)、ディスコ映画と呼ばれた「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977)、若者たちの青春群像劇「フェーム」(1980)、大ヒットした「フラッシュダンス」(1983)やら、最後はマイケル・ジャクソンのミュージック・ビデオまで登場してきて、時代と共に流行った音楽の系譜とかダンスの違いなど、教科書的に順序立てて教えてくれる。
それでいて面白いのだから、ハリウッドは夢の工場だと痛感させてくれる。