ペニーズ・フロム・ヘヴン(未) – PENNIES FROM HEAVEN(1981年)

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スタッフ
監督:ハーバート・ロス
製作:ノラ・ケイ、ハーバート・ロス
脚本:デニス・ポッター
撮影:ゴードン・ウィリス
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ、ビリー・メイ 他

キャスト
パーカー / スティーヴ・マーティン
アイリーン / バーナデット・ピータース
ジョーン / ジェシカ・ハーパー
トム / クリストファー・ウォーケン
老売春婦 / ナンシー・パーソンズ
若い警官 / M・C・ゲイニー
アコーデオン弾き / ヴァーネル・バグネリス
盲目の少女 / エリスカ・クルプカ
銀行家 / ジェイ・ガーナ─

日本公開: 未公開
製作国: アメリカ MGM作品
配給: 無し


あらすじとコメント

前回扱った「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」(1988)では、些か共演のマイケル・ケインに迫力負けしていたスティーヴ・マーティン。今回は、そんな彼の才能が如何なく発揮された異色のミュージカルを選んでみた。コメディでもあるのだが、往年のミュージカル・ファンなら思わずニンマリしてしまう作品。

アメリカ、シカゴ不況下の1934年のこと。しがない楽譜セールスマンのパーカー(スティーヴ・マーティン)は、妻ジョアン(ジェシカ・ハーパー)との間に不協和音が生じながらも、何とか生活していた。

それでも時代は最悪で、融資を受けようと銀行に行ってもまったく相手にされない。やはり、堅実に楽譜を売るしかないと溜息をつきながら、顧客の楽器店に売り込みに行った。そこに偶然、小学校教師のアイリーン(バーナデット・ピータース)が入って来た。

彼女を見た瞬間、アーサーの心にいけない心が燃え上がってしまう・・・

何とも不思議なティストだが、往年のミュージカル・ファンには堪らない作品。

不況下の時代。多くの人々は生きるのに必死だった。そんな状況下で様々な人間ドラマが繰り広げられるので、内容はかなり暗い。

アメリカが、もがき苦しんでいた時代でもあり、「ペーパー・ムーン」(1973)、「華麗なるギャツビー」(1974)、「チャイナタウン」(1974)など、1970年代前半に、アメリカで盛んに制作された『ノスタルジー映画』と呼ばれた作品群の流れでもある。

本作も、30年代当時の服装や街の雰囲気の完璧な再現で押してくる。そしてバックに流れるのは大流行していたジャズやスタンダードといった楽曲。

それが当時の歌手のオリジナルで登場して来る。時代の再現なので、他の作品群でも当たり前なのであるが、本作が面白いのは、その使用方法である。

通常であれば、ラジオから流れてくるノイズだらけの音楽によって、時代性を強調させるのだが、本作ではキャストが見事なる「口パク」で唄い、往年のミュージカル・ファンなら歓喜の涙を流すほど見事に再現される『当時』のミュージカル映画の衣装や踊りが、これでもかと登場してくる。

しかも、女性シンガーのオリジナルを男が口パクしたり、陽気に踊ったと思えば、想像シーンでは、歌詞の内容が真逆にイメージされたりと、ハーバート・ロス監督の自在な才能が如何なく発揮される。

ただし、余程の往年のミュージカル映画ファンか、スタンダード・ジャズマニア以外の日本人には興味半減であろうとも感じる。

何故ならコメディ的ミュージカルが何度も挿入される作劇とストーリィが相反しているから。

つまり単純に楽しめない進行なのだ。だから、これだけの力作なのに日本未公開なのだろうとも感じる。

尤も、スティーヴ・マーティンの映画は当たらないというジンクスがあり、確かに、ツボが違うと感じる日本のファンも多いとも思う。

だが、好きな人間には堪らないほどツボにハマる映画でもある。

特に、マーティンとヒロイン役のバーナデット・ピータースが、映画館で見ているアステア&ロジャース映画のスクリーン前で、完全コピーして同時に踊るシーンと、「ディア・ハンター」(1978)や「デッドゾーン」(1988)などクールで神経質なイメージの強いクリストファー・ウォーケンの登場シーンは、あまりの見事さと白眉さに鳥肌が立つ。

個人的には大好きな作品が多いハーバート・ロス監督の才能が再確認できる意味でも、忘れたころ、ふと再見したくなる作品である。

余談雑談 2017年1月7日
穏やかな晴天で年が明けた東京。元旦の朝は、自室から澄んだ空気の中、上って来た美しい初日の出を拝むと、すぐに地元の神社と寺に初詣に。それだけだ。 後は、元日から開けている店に、顔を出して一杯づつのハシゴ酒。例年通りとはいえ、何とも退廃的な一年