風とライオン – THE WIND AND THE LION(1975年)

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スタッフ
監督:ジョン・ミリアス
製作:ハーブ・ジャッフェ
脚本:ジョン・ミリアス
撮影:ビリー・ウィリアムス
音楽:ジェリー・ゴールドスミス

キャスト
ライズリ / ショーン・コネリー
イーデン / キャンディス・バーゲン
ルーズベルト大統領 / ブライアン・キース
ヘイ国務長官 / ジョン・ヒューストン
ガマーリ / ジェフリー・ルイス
ジェローム大尉 / スティーヴ・カナリー
ウェザーヌ首長 / ナディム・サワルハ
有力者 / ウラディク・シーヴァル
アリス / デボラ・バクスター

日本公開: 1976年
製作国: アメリカ ヘルロ・ジャフェ・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

前回の「ロイ・ビーン」(1972)の監督ジョン・ヒューストンがキャストに回り、脚本担当だったジョン・ミリアスが監督に昇格してから第二作目の作品。誇り高き遊牧民の首領を描いた骨太の娯楽作。

モロッコ、タンジール1904年、アメリカ人のイーデン婦人(キャンディス・バーゲン)と二人の子供が、リフ族の首長ライズリ(ショーン・コネリー)率いる一団に拉致される事件が起きた。

その報を受けたルーズベルト大統領(ブライアン・キース)は再選を目指しており、人気獲得には強硬手段にでるのが得策だとばかり、誘拐犯を殺してでもアメリカ人家族三名を生きたまま救出すると宣言。そして国防長官ヘイ(ジョン・ヒューストン)に、モロッコへの大西洋艦隊派遣を命令する。

しかし、モロッコはヨーロッパの列強が居座っており、アメリカは後手に回っている状況でもあった。しかもモロッコの有力者サルタンは、ヨーロッパ勢に懐柔されている状態で、アメリカ政府の要請を簡単に受け入れる可能性も低かった。

外交は難航すると想像していたライズリではあったが、彼の真の目的は別で・・・

欧米列強国とアラブ間の紛争をスケール感たっぷりに描く作品。

回教徒の真の擁護者と名乗る首長が欧米列強の侵略に一矢報いようとアメリカ人家族を誘拐する。

冒頭は、いきなり多くの男たちを容赦なく殺害する、いかにも野蛮人として登場してくる主人公。

一方の誘拐される女性も強いアメリカ女性であり、あまりにも強烈に反発するので、途中で殺害されるのではと想起させてくる。

しかし、主人公は中々の切れ者で、深謀遠慮なタイプでもあるという意外性が物語を盛り上げていく内容。

ストーリィ自体もメリハリがあり、黒澤明の大ファンでもあるジョン・ミリアス監督が、黒澤映画へのオマージュと完全に解るシーンも挿入し、骨太娯楽作として描いていく。

このミリアス監督の作品は玉石混合なのでハズレると頭を抱えたくなるのだが、本作は見事である。

特に、脂の乗り切っていた時期のコネリーの風格が素晴らしく、時折、三船敏郎に重なる場面も散見する。

一方で、大統領役を演じたブライアン・キースも、当時のアメリカ人らしい『強さ』を醸して興味深い。

というか、アメリカの第45代大統領ドナルド・トランプが注目を集め始めたとき、真っ先にブライアン・キースを連想した。どこか似ていると。

しかも本作で描かれる第26代大統領も、言動というかタイプが似ているので、更にダブってしまった。

西欧の大国からすればイスラム教という、まったく異なる宗教による軋轢が現在でも、どのように作用しているのかを知るには絶好の作品でもあり、「アラビアのロレンス」(1962)よりも早い時期を舞台にしている点も興味深い。

誇り高き回教徒たちの『男としての生き様』と『文明と支配』を優先させる白人至上主義的民族の狭間で、政治利用されても動かぬ信念を持つアメリカ人女性。

どこか、アラブをアメリカ人的に理解しようとした作品とも受け取れる骨太の佳作。

余談雑談 2017年7月8日
昨日の朝のこと。自室から徒歩10分の実家へ向う途中、観光客らしい黒人と白人女性の中年カップルが、通期途中の30代日本人男性に道を尋いている場面に出くわした。 『カッパバシ』とか聞こえたが、面倒臭いのか、急いでいるのか「ノー」とだけ言い残し、