スタッフ
監督:ブレイク・エドワーズ
製作:ブレイク・エドワーズ
脚本:トム・ウォルドマン、F・ウォルドマン、B・エドワーズ
撮影:ルシアン・バラード
音楽:ヘンリー・マンシーニ
キャスト
バクシ / ピーター・セラーズ
ミッシェル / クローディーヌ・ロンジェ
ロザリンド / マージ・チャンピオン
ヘレナ姫 / シャロン・キンバリー
ビル・ケルソー / デニー・ミラー
ディヴォー / ギャビン・マクロード
ケイン / バディ・レスター
クラッターバック / J・エドワード・マッキンレー
レヴィンソン / スティーヴ・フランケン
日本公開: 1968年
製作国: アメリカ ミリッシュ・コーポレーション作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
ハリウッド映画界の実態を描く作品で繋げた。前回取り上げた「オスカー」(1966)とは、正反対のジャンルで、ハリウッドにやって来たインド人俳優が繰り広げるコメディ。
アメリカ、ロサンジェルスアクション大作に出演するため招聘されたインド人俳優のバクシ(ピーター・セラーズ)。ところが、全く空気が読めないというか、単純なドジ。
何度も撮影を中断させられて、監督は我慢の限界だった。撮影も遅延し、いよいよ今日中にクランク・アップしないと大問題になるところだったが、何とか最後の大爆破シーンだけを残し、終了予定と相成った。監督始め、スタッフにも緊張感が走る。ところが、バクシは靴ひもが解けたので、直そうとして足を置いたのが着火スイッチの上。一瞬で壮大なセットは木端微塵。
茫然ながらも監督は、撮影所のドン、クラッターバック(J・エドワード・マッキンレー)に報告。当然、ドンも怒り心頭で、解雇すると叫び、バクシの名前を書きとめると部屋をでていった。
直後、秘書が入室してきて、ドンの邸宅で催されるパーティー参加者の名簿を探すと、何とそのリストに今しがた走り書きしたバクシの名前が・・・
異文化の世界に異国人が闖入して大騒動となるコメディ。
虚構に満ち、派手な映画界。セレブを自惚れる人間が集うパーティ。当然、大スターもいれば、スターを夢見る若手もいるし、金の話ばかりしたがる輩もいる。
プールを備えた大豪邸で催されるパーティではケータリング・スタッフも大勢雇い、バンドまで呼んでいる。そこに場違いなドジがやって来る。
内容は単純で、主人公が悪気はないのに、徹底的にそのパーティーを破壊していくストーリィである。
変幻自在の怪優ピーター・セラーズが本作ではインド人に成りきり、怪しげな英語と、見事なメークで暴れまくる。
とはいっても、アクションではなく、どうしようもないドジとして軽妙に演じていくのが痛快なのだが、彼だけでは飽きられると思ったのか、出張スタッフのひとりに、セラーズ張りの滑稽な役を登場させてくる。
ほとんど台詞もなく、パントマイムのようなオーヴァー・アクトを見せるので、セラーズとは好対照であるのだが、どうにも共同脚本を手がけたブレイク・エドワーズ監督の設定の大雑把さが目立ってしまう。
「コメディ」というジャンルはお国柄があり、その国民性によって笑うツボが違うもの。本作も、その違いが気になった。
ハリウッド・セレブを痛烈に批判するのでもなく、どの登場人物のキャラクター設定も中途半端。
派手なドタバタもラストになって登場するが、それまでの小技的ギャグ進行と編集のリズム感がバラバラで、心底は笑えない。
個人的なのだろうが、どうにもブレイク・エドワーズのコメディは肌に合わない。役者の力量に頼り、内容と進行も大雑把と感じるから。
本作も然りで、セラーズに頼り切りの印象が拭えない。そのセラーズも作品によっては、やり過ぎ感が誇張され食傷気味になることもある。本作でも監督とセラーズの悪い部分がでているという印象。
このコンビは「ピンクの豹」(1963)で当たり、脇役だったセラーズ演じるクルーゾー警部を主役に据えた続編「暗闇でドッキリ」(1964)に続く三作目。
更に二人は「ピンク・パンサー」シリーズで組み続けていく。
これぞアメリカのコメディという内容であるが、好き嫌いは別れるであろう作品。