スタッフ
監督:シドニー・ルメット
製作:リチャード・D・ザナック、デヴィッド・ブラウン
脚本:デヴィッド・マメット
撮影:アンジェイ・バートコウィアク
音楽:ジョニー・マンデル
キャスト
ギャルヴィン / ポール・ニューマン
ローラ / シャーロット・ランプリング
コンキャノン / ジェームス・メイソン
モリッシー / ジャック・ウォーデン
ホイル / ミロ・オーシャ
プロフィー大司教 / エドワード・バインズ
ケイトリン / リンゼイ・クロース
サリー / ロクサーヌ・ハート
モーリン / ジェリー・ボヴァッソ
日本公開: 1983年
製作国: アメリカ ザナック・ブラウン・プロ作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
前回は人間嫌いの男をメインに据えた異色西部劇ドラマだった。今回はポール・ニューマンが不甲斐ない弁護士を演じた作品にしてみた。個人的に大好きな法廷映画の秀作「十二人の怒れる男」(1956)に、出演していたジャック・ウォーデンとエドワード・バインスが出演し、監督は同じくシドニー・ルメット。そこにニューマンが絡むので、期待が高まるというもの。
アメリカ、ボストン落ちぶれて意欲などまったく忘れた弁護士ギャルヴィン(ポール・ニューマン)。日々、アルコールに溺れ、新聞の死亡欄で見知らぬ葬式に行っては、故人の知り合いと嘘を付き、訴訟沙汰がないかと物色するのが唯一の活動。
そんな彼を不憫に思う先輩弁護士モリッシー(ジャック・ウォーデン)から、医療ミスから廃人状態になった女性の弁護を斡旋された。相手は寺院経営の大病院であり、モリッシーは、示談に持ち込んで大金をせしめらる簡単な交渉事だと。
依頼を引き受け、交渉に入ると相手側弁護士は超大物コンキャノン(ジェームス・メイソン)率いる最大事務所で、すぐに高額示談金を提示してきた。
その上、行きつけのバーで声をかけた美人のローラ(シャーロット・ランプリング)は、ギャルヴィンに悪しからぬ感情を持っているようで、どうやらツキが回ってきたとほくそ笑んだ。
しかし、証拠提出用にと病院に行き、四年も植物状態で横たわっている当該女性を見て・・・
正義感を忘れた弁護士が再起を賭けて裁判に臨む姿を描く佳作。
逮捕され、弁護士資格剥奪寸前までいった主人公。当然、何か裏がありそうだが。
以後、どうしようもない男に落ちぶれていたが、植物状態の原告を見て、一念発起。高額示談金を蹴って、裁判に持ち込むことを決心する。
ところが、相手は老獪で狡猾。勝訴のためには手段を選ばず、お抱え弁護士が十人以上もいる弁護士。次々と金と権力で裏工作を駆使し、追い込んでくるのだ。
その上、担当判事は主人公のことを露骨に毛嫌いしている。
一方、主人公は数年も審理を担当しておらず、しかも以前は敗訴ばかり。味方はリタイア状態の先輩と翳のある美女のみ。
これだけ設定が揃えば、後は進行次第である。
頑張ったって、所詮、無力。覚醒した正義感など、金と権力の前では何ら効力など発揮しないと見せ付けてくる。
どんどん追い詰められていき、更に、驚くべきことが起きてくる展開。
「十二人の怒れる男」同様、11対1という多勢に無勢から始まり、ひとつづつ真実を炙りだしていくが、次に、また別な難問が持ち上がる進行はどうしても同じく法廷サスペンスとして重ねて観てしまう。
ということは、もし「十二人~」を観ていれば、これだけ窮地に追い込まれる展開でも、主人公が敗北するラストを想像する観客はいないだろうが。
役者陣では、敵役の老獪な弁護士ジェームス・メイソンと、謎めいた美女役のシャーロット・ランプリングが目立つが、中々どうして、主人公に味方する先輩役のジャック・ウォーデンが良い味をだしている。
解りきっているが、弱者であろうが正義は必ず勝つというセオリーを謳う佳作である。