スタッフ
監督:ロバート・アルドリッチ
製作:ロバート・アルドリッチ
脚本:A・I・ベゼリデス
撮影:アーネスト・ラズロ
音楽:フラク・デ・ヴォル
キャスト
ハマー / ラルフ・ミーカー
ソバリン博士 / アルバート・デッカー
イヴェッロ / ポール・スチュワート
フライデー / マリアン・カー
ヴェルダ / マキシン・クーパー
イェーガー / ファノ・ヘルナンデス
パット / ウェズリー・アディ
クリスティーナ / クロリス・リーチマン
マックス / ジャック・イーラム
日本公開: 1955年
製作国: アメリカ パークレーン・ピクチャーズ作品
配給: ユナイト、松竹
あらすじとコメント
前回が、1980年代半ばというアメリカが疲弊した時代の異色ハード・ボイルド作品。今回は、アメリカがアメリカらしかったころの異色ハード・ボイルドをチョイスした。有名な探偵作家ミッキー・スピレーンによる小説の映画化で、カルト扱いされている作品。
アメリカ、カリフォルニアとある深夜、下着姿にトレンチコート、裸足という若い女性がハイウェイを必死に走り、車を止めようとしていた。しかし、そんな女を拾う車は一台もおらず、遂に女はオープンカーの前に立ちはだかった。急ブレーキを踏み、側道に外れる車。
乗っていたのは探偵のハマー(ラルフ・ミーカー)だ。何か事件の匂いを嗅いだハマーは、女を乗せた。しかし彼女は名前しか言わず、実にミステリアスだ。途中、ガソリン・スタンドに立ち寄ると女は誰か宛てに手紙を投函した。
そして彼女の要望するロスのバス・ターミナルに向けて走らせていると、突然、別な車が立ちはだかり二人を襲った。ハマーは重傷を負わされ、女は殺され、再度、二人は車に乗せられると川に転落させられてしまう。
何とか、一命を取り留めたハマーは病院で意識を取り戻したが、警察に殺人容疑を掛けられ・・・
大きな犯罪に巻き込まれる探偵の捜査を描く、ミステリー・アクション。
タフで女にモテる探偵。偶然、拾った女が殺され、更に、自分に容疑がかかる。探偵免許や銃も取り上げられ八方塞がり。
味方は、秘書兼恋人の美女や、修理工場を営むスパニッシュの男など少数。
それでも、主人公は当然、謎に迫っていくが、次々と人が殺され、自らも窮地に追い込まれていくという展開。
良い意味でも悪い意味でも、当時のハード・ボイルド小説の典型。謎解きとアクションとエロティックさが加味され、渾然一体となって進行する。
クールでタフという主人公に惚れる女が続出し、微妙な関係の警察や、殺人を厭わない敵が絡まる。
ただし、成功作かというと顔を横に振りざるを得ない。先ず、主役を演じるラルフ・ミーカーにオーラがないのが致命的。
タフさもなければ、男前でもない。何故、こんな男に続々と美女が惚れるのか理解に苦しむ。
他のキャストも弱い。移民の国らしく、ヒスパニックやイタリア系など、様々な人種が独特の英語で個性をだしてはいるが、どうにも、すべてが胡散臭い。
特に、痛切に感じるのが、原作の書かれた時代性。死んだ美女が持つ秘密と、敵が何人も殺してまで手に入れたいブツが、現在では、信じ難い代物なのである。
当時の情報からすると、その程度の認知度しかないのは理解できるが、現在であれば、全米を巻き込むパニック・アクションの展開となる代物。
主人公がその正体を知る場面では、ミステリアスさを醸してはいるが、現実には即死である。
というか、その代物が、そんな簡単な梱包で良いわけがない。真面目なノワール作として作られているだけに、あまりのシュールさに笑う気も起きなかった。
ただ、当時としては、まだ確立されていないアルドリッチ節の将来性を嗅ぎ取ることが出来る演出に酔うのがベストな鑑賞法であろうか。
ファーストシーンのタイトルの出方や、ミステリアスな進行など、嫌でも期待を持たされるので、終盤で分かる秘密の代物が別な存在であり、主役がリチャード・ウィドマークやリー・マーヴィンあたりの別な俳優であれば、見応えのある作品に仕上がっていたであろうにと残念さが勝る作品。
尤も、それを「カルト」と呼ぶのかもしれないが。