スタッフ
監督:ロバート・シオドマーク
製作:ミシェル・クライク
脚本:ダニエル・フックス
撮影:フランク・プラナー
音楽:ミクロス・ローザ
キャスト
トンプソン / バート・ランカスター
アンナ / イヴォンヌ・デ・カルロ
ダンディー / ダン・デュリエ
ラミレス / スティーヴン・マクナリー
ヴィンセント / トム・ペディ
フランク / パーシー・フェルソン
フィンチリィ / アラン・ナピアー
ヘレン / メグ・ランドール
ウォルト / ジョン・ドーセット
日本公開: 1956年
製作国: アメリカ ユニバーサル作品
配給: ユニバーサル
あらすじとコメント
アメリカ製のノワールもので繋げた。今回は私立探偵でも刑事が主役でもなく、市井の人間が愛欲に目がくらんだ末の顛末を描くサスペンス。
アメリカ、ロサンジェルス仕事を転々とし、二年振りに故郷に戻って来たトンプソン(バート・ランカスター)。だが、実家の両親や同級生で警部補のラミレス(スティーヴン・マクナリー)らに訝しがられた。
何故なら、トンプソンは結婚7ヵ月で離婚した元妻アンナ(イヴォンヌ・デ・カルロ)に、未練タラタラだと思っていたからだ。完全否定するトンプソンだが、かつて二人で一緒に出歩いたバーに顔をだし、彼女の影を追う始末。それでも自分は吹っ切れたと思いこませようとしている。
数日後、行きつけのバーで、遂にアンナを見つけるトンプソン。彼女も驚くが、懐かしげに、且つ愛おしそうに彼を呼んだ。引き込まれるように席に着き、それでも、平然を装おうと必死になるトンプソン。ところが、そこをどけ、と言ってきた男がいた。街の顔役のスリム(ダン・デュリエ)だった。
俺の女房に何の用だ・・・
元妻への未練が巻き起こすクライム・サスペンス作。
喧嘩が絶えず、たった7ヶ月で離婚した元夫婦。その痛手もあり、妻を忘れようと町をでた主人公。二年が経ち、本人は吹っ切れたとばかり帰郷するが、それが間違いの始まり。
というか、再会を期待しての帰郷であることは明らかである。元妻も未練がありそうだが、再婚の相手が最悪。元妻に暴力も振るうし、主人公にだって好戦的。
同級生の刑事が手を引けと言うのも頷ける相手。ところが、再燃した心は、誰にも止められないから厄介なのだ。
しかも、主人公は以前と同じ現金輸送会社に再就職したから、ことはややこしくなっていく。
果たして元妻の真意は、というミステリ─仕立て。だが、明らかに「悪女」というスタンスの単純な『ファム・ファタール』ものではない。
その点は面白いのだが、主人公が「恋は盲目」とばかりに、女々しいのに格好付けるからこそ、自らが泥沼にはまっていく展開。
それにより、主人公の巻き込まれ型とも違うし、元妻とヤクザの現亭主との真の関係性、幼馴染の刑事の警察官としての推理などが複雑に絡み、単なる「精神的不安定さ」なのか、計算づくの「裏切り」なのかを混乱させてくる展開。
だが、言ってしまえば、主人公のあまりにも身勝手というか、子供じみている性格設定が根底にあり、それが常に内容を引っ掻き回しつつ、結末の着地点を目指すので、どうにも無理矢理感がある印象が勝った。
時代といえばそれまでなのだが、それでも当時の映画として成立させるための方便としては、一応の成功を収めてはいるとも感じる。
主役のランカスターも上手い役者ではあるのだが、未だ実力を発揮するまでには至らずオーヴァー・アクト気味。
ヤクザの亭主役のダン・デュリエも、些か、線が細い。唯一、ヒロインのイヴォンヌ・デ・カルロの存在感が、バランスを取っていると感じるが、全体的にB級感は否めないノワール作品。