ベニスで恋して – PANE E TULIPANI(2000年)

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スタッフ
監督:シルヴィオ・ソルディーニ
製作:ダニエル・マギオーニ
脚本:ドリアナ・レオンデフ、シルヴィオ・ソルディーニ
撮影:ルーカ・ビガッツィ
音楽:ジョヴァンニ・ヴェノスタ

キャスト
ロザルバ / リーチャ・マリエッタ
ジラソーレ / ブルーノ・ガンツ
カポナンジェリ / ジュゼッペ・パティストン
グラツィア / マリーナ・マッシローニ
バルレッタ / アントニオ・カターニア
フェルモ / フェリーチェ・アンドレアーシ
ケティ / ヴィタルバ・アンドレア
アデーレ / タティアナ・レポーレ
サルヴォ / マッティオ・フェーボ

日本公開: 2000年
製作国: イタリア、スイス モノガタリ作品
配給: ギャガ・コミュニケーションズ


あらすじとコメント

今回も疲れた中年男の話。とはいっても主人公は人妻の方である。ヴェネツィアというロマンティックな場所で繰り広げられるのだが、奇妙なティストで進行する大人の御伽噺。中年男を演じた、ドイツ系俳優ブルーノ・ガンツが、前回紹介した「フランキー・ザ・フライ」(1996)の主役デニス・ホッパーに似ていると感じたのもチョイスの一因。

イタリア、ペスカーラ家族たちと一緒にバス旅行でローマに向かっているロザルヴァ(リーチャ・マリエッタ)。21歳で結婚し、今では子供たちもハイティーンになった。だが、どこかワガママな夫は、自分が楽しめれば旅は楽しい、と思うようなタイプ。

途中、立ち寄ったドライブインのトイレで誤って指輪を便器に落としてしまうロザルヴァ。悪戦苦闘して指輪を何とか拾い上げて外にでると、何とバスは出発した後。携帯電話から夫に連絡を入れるが、夫は、乗り遅れていたことさえ知らない状況で、いきなり激怒する始末。

それでも、一応、妻のために、バスを戻すように交渉するから、その場を動かずに待っていろと命令。そうは言われたものの、自分があまりにも家族から蔑ろにされていると痛感する彼女。

偶然、通りかかった女性に声をかけられ、車に同乗させてもらうことにした。こうなればヒッチハイクで戻ろう、と。ところが次に乗った車の若者が、ヴェニスに向かうと言ったことから、突然、閃くロザルヴァ。

自分も行くわ。ヴェニスに行くのは夢だったのよ・・・

家族生活に疲れた中年女が、憧れのヴェニスを訪れて人生を見つめ直すシニカルなラブ・コメディ。

家庭不和ではないものの、得も言えぬ孤独感に苛まれているヒロイン。一泊だけのつもりで夢のヴェニスに着いたが、結局、そのまま居続けることにする。

そこで知り合った安食堂の初老ウエイターの部屋に転がり込み、花屋に勤め、更に友人も出来てきて、何とか、第二の人生的生活を開始する。

しかし、今度は逆に、家族を蔑ろにしてまで、自分の失われた20年間を取り戻そうとするのは、かなり身勝手。

とはいっても、亭主は5年も不倫関係を続ける女性がいたり、思春期の息子だってマリファナに手をだしたりしている。

家族といえども、個人優先の価値観であり、それでいて困ったときだけは依存する。

登場人物は、どこかしら『普通』ではない部分を持っている。

そんな中で、唯一、思慮深く丁寧な口調で他人に接するのが、安食堂のウエイターである中年男。

実は、彼だけがイタリア人ではないという設定。アイスランド人らしいが、漂う雰囲気は、何か重いものを秘めている。ゆえに、常に控え目という風情だ。

そこに行方不明のままの妻を捜すべく俄か探偵を送り込んで来たりするから、ややこしくなる展開。

ヴェニスで中年男女の恋愛というと名匠デヴィッド・リーンの秀作「旅情」(1955)を連想させるが、それを踏まえた上で、イタリア人が撮るとどうなるかという作品でもある。

つまり、どうにも素直に乗り切れないというか、入り込めない『個性』と『価値観』の不思議なバランス感覚が存在する進行。

くたびれた中年男女が織り成す、控えめな恋愛というよりも『思慕』。時々、インサートされる現実味を帯びた家族たちの夢。

ヴェネツィアの観光部分でない場所ばかりで織り成す不思議なティストの恋愛ドラマだが、ラストは、好き嫌いが別れるであろう。

余談雑談 2016年3月19日
東京もやっと春。暖かくなったと思ったら、もう桜だ。気象協会や、お天気会社によってバラツキがあるが、ほぼこの連休中に開花宣言。 今度の週末は満開だろうか。それにしても、早い。お彼岸時期に開花し、新年度を迎える頃には散ってしまいそうだ。 ピカピ