ウェルカム・トゥ・サラエボ – WELCOME TO SARAJEVO(1997年)

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スタッフ
監督:マイケル・ウィンターボトム
製作:グレアム・ブロードベンド、ダミアン・ジョーンズ
脚本:フランク・コットレル・ボイス
撮影:ダフ・ホブソン
音楽:エイドリアン・ジョンストン

キャスト
ヘンダーソン / スティーヴン・ディレイン
エミラ / エミラ・ヌシェヴィッチ
フリン / ウディ・ハレルソン
ジェーン / ケリー・フォックス
ニーナ / マリサ・トメイ
グレッグ / ジェームス・ネスビット
リスト / ゴラン・ヴィシュニック
ヘレン / ジュリエット・オーブリー
アニー / エミリー・ロイド

日本公開: 1998年
製作国: イギリス ドラゴン・ピクチャーズ・プロ作品
配給: アスミック・エース


あらすじとコメント

前回の「ひかりのまち」(1999)を撮ったイギリスの監督マイケル・ウィンターボトム。ドキュメタリー・タッチの映像を盛り込み、人間の本質を描く作家でもある。今回は、戦火の国を描くやるせない作品。

ボスニア・ヘルツェゴビナ、サラエボセルビア人勢力に包囲された街では、破壊と殺戮が繰り返されていた。そんな場所に取材に来ているイギリス人ジャーナリストのヘンダーソン(スティーヴン・ディレイン)や、アメリカ人記者フリン(ウディ・ハレルソン)たち。

彼らは、眼前で市民が狙撃されたり、襲撃直後の凄惨な現場など、命懸けの取材を連日行っていた。しかし、国連軍による監視はあるものの、西欧諸国にとっては、さして重要課題とは見なされていない状況だ。

そんな日常の中、ヘンダーソンは戦災孤児院を訪れ、心動かされた。それ以降、何度も通い、連続性のある取材を行うようになる。しかし、当然、その場所も戦場の一部であり、攻撃の対象でもあるのだ。彼はそこで、戦争が終わるまでという条件で子供たちをイタリアに一時避難させるプロジェクトを実行するニーナ(マリサ・トメイ)と知り合う。

同行取材を申しでて、許可を得るが、ヘンダーソンは孤児の一人で9歳になる女児エミラ(エミラ・ヌシェヴィッチ)が、特段、気になって・・・

戦時下での一般市民たちの悲惨な状況を描きながら西欧諸国を批判する社会派ドラマ。

ベルリンの壁崩壊後、ユーゴスラビアから独立しようとしたボスニア・ヘルツェゴビナ。だが、その中のセルビア人勢力は自分らの自治区を確立しようとして起きた紛争が題材。

西欧諸国からすれば、旧ソ連、要は東側の独立紛争など、対岸の火事的な対応であったようだ。日本では、それ以上に無関心だった。

しかし、そこに行ったジャーナリストらは、戦争の悲惨さを目の当たりにし、数字が取れる内容にしか興味を示さないTV局を筆頭とした上層部たちに対抗しつつ、命懸けで取材をしている。

冒頭からショッキングなシーンで始まり、以後、実際のドキュメンタリー画像と作劇による犠牲となった市民たちの凄惨な場面が、次々と登場してくる。

ジャーナリストたちも、一々、驚いてはいられない状況であり、市民たちも、いつ自分が死ぬかという恐怖の中でも、仕事を探したり、ふてぶてしく生き残ろうとする。

例えば、卵がどれほど貴重な食材であるかとか、タバコをあげたことから事態が好転したりするのだ。

西側ジャーナリストたちも、仲間内で、くだらないジョークを言い合ったり、いつかこの地でコンサートをしてみたいと呟いたり、夢とも逃避とも付かないことで、少しだけストレスを発散するしかない。

誰もが死と隣り合わせの日常を送っている中で、駆け足で視察に来た国連派遣の高官に囲み取材するときは、かなりシニカルな質問をしていく。

「孤児救済に関して」と質問した主人公への返答が、本作を物語っている。「理解しているが、この場所以上に悲惨なところが、世界には13ヶ所もある」。

政治家など世界共通で、信じ難い人種であると浮き彫りにする場面だ。以後、主人公は「14番目の場所だから」と言い続ける。

そういったリアルな環境が綴られていき、あまりの凄惨さに主人公は、ひとりの少女の命を助けたいという衝動に駆られる。

何とか少女を連れ、イギリスに帰国すると、映画のトーンが変わり、『当たり前の平和』が強調されるが、やがて、主人公は、再度、サラエボに戻らなければならなくなる。

神経がマヒしていると思わせながら、極限下でも人間の生存欲求がある。否や、そういう状況だからこそ、平和に当たり前に浸かりながら、ないものねだりをする西側の人間たちへのアンチテーゼを浮かび上がらせるのだ。

些かストレートすぎるきらいはあるが、社会派ドラマとして成立している作品。

余談雑談 2016年4月23日
まったく収束を見せない熊本の地震。復旧活動や救援体制などは日に日に効果を上げてるようにも見えるが、避難生活を強制されてる方々にはストレスや不安は増すばかりだろう。 その影響の一端なのだろうが、先週の日曜夜のこと。突如、東京で長年お世話になっ