先立ての午後、母の依頼で役所まで出向いた。実家からは、徒歩で15分程だ。
要件は、あっという間に終わった。戻る気にもならず、ちょいと一杯かなと。場所は上野だし。
で、足が向いたのが「アメ横」。平日の午後だが、様々な店が開店中で人も多い。TVなどでも紹介される肉屋経営店は流石に客が多い。へそ曲がりな自分は、当然、パス。
すぐ近くに、数年前に行った飲み屋があったはず。そこは立ち飲みでキャッシュ・オン・デリバリーのスタイル。
ビールは大瓶410円、肴は醤油皿程の大きさながら、160~200円程度。ただし、品物と現金引き換えなので、追加するうち、幾ら使ったか混乱するのが玉に瑕。なので、常連客は使用可能な小銭等の金をカウンター上に置いている。
「コブクロ酢味噌」、「身欠きニシン」、「牛スジ辛煮込み」、「野菜天ぷら」とビール一本で1240円だった。大満足な昼下がり。
気分が良くなって、帰りは地下鉄だ。その車内で「一流の育て方」なる広告を発見した。坐った席の反対側のドア横に貼ってあったもので、タイトル以外は不明ながら、一瞬、「?」が点いた。
後で調べたら、どうやらビジネスでも勉強でもズバ抜けて出来る子供にするハウツー本らしかった。
ただ、車内では、何とも奇妙な感覚が湧いた。大瓶一本で酔ったわけでもなかろうし、間違いなく、自分らしい斜に構えたというか、素直じゃない性格の所為に違いないが、この手の本を真剣に読み、子供に教育する親は、どんなタイプかと。
昔の『一億総中流』的意識の名残りでもなかろうが、せめて、わが子は一流にしたいのか。でも、そんなに簡単なのかな。
ペットじゃないのに、自分らが優位で上から目線というか、深く考えずに他人が読めない名前を付ける親もいる。
でもな、突然変異でもなけりゃ、いきなり天才は産まれまい。それとも、自分は中流の上だから、子供は頑張れば一流になると信じるのか。
直後、自分は別な企画が浮かんだ。「せめて二流になる育て方」。
それだって、自分はどのポジションかと考えたら駅に着いた。ホームには乗車を待つ大勢の観光客。何故かドアが開いたら酔いが醒めた午後。