明日に処刑を・・・ – BOXCAR BERTHA(1972年)

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スタッフ
監督:マーティン・スコセッシ
製作:ロジャー・コーマン
脚本:ジョイス・H・コリントン、ジョン・W・コリントン
撮影:ジョン・M・スティーヴンス
音楽:ギブ・グヴィルボー、サド・マックスウェル

キャスト
バーサ / バーバラ・ハーシー
シェリー / デヴィッド・キャラダイン
ブラウン / バリー・プリマス
モートン / バーニー・ケイシー
バックラム / ジョン・キャラダイン
用心棒1  / ヴィクター・アルゴ
用心棒2  / デヴィッド・R・オスターアウト
チリ / アン・モーレル
サウンダース / ハリー・ノーサップ

日本公開: 1976年
製作国: アメリカ アメリカン・インターナショナル・プロ作品
配給: 日本ヘラルド


あらすじとコメント

マーティン・スコセッシで繋げる。どうせだから監督の長編デビュー作にしてみた。B級映画の雄、ロジャー・コーマン制作の当時、量産されていた「不況下のアメリカ」を舞台にした犯罪モノだが、既にスコセッシの片鱗が窺える作品。

アメリカ、アーカンソー貧しい農家の娘バーサ(バーバラ・ハーシー)は、父親が故障している飛行機での農薬散布を成金農場主に命じられ、命を落とす瞬間を目撃してしまう。

その父の亡骸を見て無礼な言葉を吐いた農場主に飛びついた。近くに居合わせた鉄道敷設員のシェリー(デヴィッド・キャラダイン)と父に雇われていた黒人労働者モートン(バーニー・ケイシー)も参戦し、農場主らを殴り倒した。

とはいえ、バーサは他に家族もなく、行き場も金も無くなり、貨物列車に飛び乗った。そんな彼女がテネシーのとある操車場に降り立つと、そこでシェリーが組合運動を扇動していた。再会を喜ぶ二人は自然と結ばれたが、翌朝、彼はわずかばかりの金を残し、どこへともなく消えていた。また途方に暮れるバーサ。

目的もなく歩き続けた彼女は、失業者たちが集うキャンプに辿り着いた。そこで北部出身の気弱そうなギャンブラー気取りのブラウン(バリー・プリマス)と知り合う。

行き場のない二人は、鉄道会社の弁護士相手に、イカサマ・ポーカーを持ちかけるが・・・

何てことないが、妙に味わいのあるB級犯罪モノの佳作。

家族を亡くした孤独な少女。労働者の地位向上を謳う鉄道従事者。差別を受ける黒人。そして北部から来たゆえに逆差別を受ける気弱な男。

メインはこの四人。天涯孤独となった少女は、父の死に際に雇主を殴り倒してくれた男に惹かれ、処女を捧げる。

とはいえ、先行きなどない人生。労働者だって、組合活動から「アカ」のレッテルを張られ、鉄道会社から目を付けられる。

少女は、北部のギャンブラー男と組んでイカサマをしようとして、偶発的に殺人を犯してしまう。

不況下の時代、こう来れば、お決まりのコースだ。要は「俺たちに明日はない」(1967)の展開が待っているだけ。

果たして、その通りに四人が人生を転げ落ちていく様を追うストーリィなのだが、当時、新進監督であったスコセッシの青い感じがするが、妙に落ち着いて手堅い演出が、独特な雰囲気を醸しだす。

四人は組んで、自分らを虐げた鉄道会社のみを狙って強盗を重ねていく展開で、ロジャー・コーマンお得意の「アクション」「グロ」「エロ」が随所に、はめ込まれて進行する。

しかし、製作者としてのコーマンの先見性なり話題性には、脱帽する。内容自体は「俺たちに明日はない」のパクリだが、移動手段は自動車よりも貨物列車。

不況下の貨物列車での無賃乗車を描くアクションというと思い起こすのがロバート・アルドリッチの「北国の帝王」(1973)だが、製作されるのは本作の一年後である。

尤も、日本公開は本作の方が遅いので、勘違いしている人間も多いかもしれない。

そして、労働者役を演じたデヴィッド・キャラダインが、やはり不況下で艱難辛苦の人生を辿る「ウディ・ガスリー/わが心のふるさと」(1976)に出演するのは本作の四年後である。

何と、本作で彼は、ヒロイン役のバーバラ・ハーシーと恋仲になり一児を儲ける。更には実の父親で疎遠であったジョン・キャラダインと共演を果たしている。

このジョン・キャラダインという俳優も、ジョン・フォード映画の常連で、名作「駅馬車」(1939)でのクールなギャンブラー役が印象深い。他にも、多くの作品に脇役として出演しているので、見たことがある人は多いだろう。

しかも実の父親であるジョンが演じる役どころは、主人公らが敵対する鉄道会社の社長。

幼少時代のデヴィッドは、仕事で忙しい父にぞんざいに扱われ、両親の離婚後は母親と行動を共にしているのだ。その親子が「敵」として対峙する。何とも、興味深いではないか。

やはりロージャー・コーマンはタダモノではない。上映時間も1時間半弱。すごい低予算作品だが、スコセッシが学び取ったことは数多いと感じる。

どうでも良い亜流作品ながら、「山椒は小粒でもピリリと辛い」的佳作である。

余談雑談 2015年12月5日
おやおや、もう師走である。思い起こすと今年は、随分と旅行づいていた。この数年では、一番だろう。 後半は、間を空けずの沖縄旅行のために飲み屋への出陣も減り、気が付くと浪費しなくなった。安いとはいえ、どれほど飲み歩いていたかと失笑を禁じ得ないの