ボクサー – THE GREAT WHITE HOPE(1970年)

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スタッフ
監督:マーティン・リット
製作:ローレンス・ターマン
脚本:ハワード・サックラー
撮影:バーネット・ガフィー
音楽:ライオネル・ニューマン

キャスト
ジェファーソン / ジェームス・アール・ジョーンズ
エレノア / ジェーン・アレクサンダー
ゴールディ / ルー・ギルバート
ディクソン / ロバート・ウェッバー
ダン / R・G・アームストロング
キャメロン  / ハル・ホルブルック
ママ・ティニー  / ベア・リチャーズ
シピオ  / モーゼス・ガン
フランス人プロモーター / マルセル・ダリオ

日本公開: 1971年
製作国: アメリカ 作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

アメリカ映画におけるボクシング・チャンピオン。腕っぷしが強い、移民系が多いのは歴史が証明している。前回の「レイジング・ブル」(1980)はイタリア系、今回は黒人。当時の時代なしには語れない見事な力作。

アメリカ、サンフランシスコ1910年のこと。オーストラリアで重量級のボクシング・チャンピオンになったジェファーソン(ジェームス・アール・ジョーンズ)が帰国した。

プロモーターらは、これでアメリカ国内でチャンピオンに挑戦できると喜ぶが、同伴者を認めて絶句した。何と白人女性のエレノア(ジェーン・アレキサンダー)だったからだ。黒人男が白人女性と付き合うことなど御法度だった。だが、そんなことは一切お構いなしと笑うジェファーソン。エレノアも革新的価値観の持ち主で、自分も意に介さぬと。困惑する周囲の白人たち。

一方で、白人至上主義の塊であるプロモーターらは、絶対に黒人なんぞにチャンピオン・ベルトを渡してはならぬと、一年前に現役を引退した前チャンピオンを『偉大なる白人の希望』と祭り上げ、カンバックさせた。しかも、観客として黒人が簡単に応援に来られないロッキー山脈近くの町に設定する念の入れよう。

完全アウェーで、試合が始まったが・・・

アメリカで誕生した初の黒人ボクシング・チャンピオンが辿る過酷な人生を描いた力作。

20世紀初頭、アメリカでは被差別者として生まれ育ち、そして死んでいくしかなかった黒人。人権など存在せず、奴隷の延長線上の存在でもあった。

そんな時代に、今まで白人のみであったチャンピオンの座を脅かす存在として登場してきたのが主人公である。

しかも現行のチャンプたちではKOされ、ベルトを奪取される可能性が高い。果たして、一瞬にして黒人チャンピオンが誕生するのであるが、そこからの展開が胸を打つ。

主人公も被差別者として生きてきて、だからこそ、自分の実力を絶対的に信じ、勝利を勝ち取って行く。ただし、その表現方法がいかにも、教育を受けていない野生児そのもの。

しかも、進歩的な白人女性と付き合うというのも、味方である周囲をハラハラとさせるのだ。

結果的に黒人の地位向上に役立つと信じる仲間もいるが、逆に、白人に媚びて少しでも白くなるのが夢かと、本来、仲間である黒人の一部から敵まで作りだしてしまう。

目の当たりにする個々の価値観。それでも、自分の力で生きて行こうとする。だが、更に主人公は逆境に追い込まれて行く展開を見せる。

何と、政府筋や司法関係者から目を付けれるのだ。このままでは、黒人たちが立ち上がり、処遇改善を求めて暴動まで起こす火種となりかねないと。

こうなっては、完全孤立である。結局、官憲らの手で犯罪者に仕立て上げられ、試合どころか収監という事態に追い込まれて行く。

そして主人公と恋人らが取る行動もストレートすぎる。何と国外逃亡である。

ただし、単純にそんなことをすれば政府筋の思うツボである。

映画は、更に悲劇性を加速させていく。時代性といえばそれまでだが、頭脳よりも腕っ節で這い上がるスポーツの類としては、ストレートに攻めるだけでは、何ら打開策を見いだせず追い込まれ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、メキシコと逃亡生活を余儀なくされて行く。

当然資金は底を尽き、試合によるファイト・マネーも入手できずに、不本意ながら場末のキャバレーでミュージカル劇までする羽目に陥って行く。

そして、良く言えば「司法取引」、実は「八百長試合」を提案されていく。

ほぼ事実らしいが、かなり過酷な人生を監督のマーティン・リットが様々な手法で描いていく。

敢えて試合場面を正攻法で見せず、観客の声のみで想像させたり、突如、ミュージカル調になったり。その中で、圧倒的なリアリティを醸しだしていく。

何といっても、主役を演じるジェームス・アール・ジョーンズが見事。

単細胞的直情型だが、何も考えずに正面突破を図り続ける「強がり」の表情が、彼の虚しさを浮かび上がらせていく。

特に、ラストでやっと正攻法で描かれるボクシング場面は、かなりスリリングだ。

あがけばあがくほど、追いつめられていく、虐げられた人種のプライドと敗北を描く力作である。

余談雑談 2015年12月19日
どうやら「たばこ税」が上がるようだ。消費税の軽減税率とやらで、不足分を補うためとか。財務大臣は「聞いてない」と発言したようだが、実際は上げるための布石であるのは間違いない。 これで、ひと箱500円時代に突入。まあ、欧米からすると、それでも安