スタッフ
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド
脚本:ジェームス・カラバトソス
撮影:ジャック・N・グリーン
音楽:レニー・ニーハウス
キャスト
ハイウェイ軍曹 / クリント・イーストウッド
アギー / マーシャ・メイソン
ジョーンズ / マリオ・ヴァン・ピープルズ
パワーズ少佐 / エヴァレット・マッギル
ウェブスター軍曹 / モーゼス・ガン
ジェニングス / ボー・スヴェンソン
リング中尉 / ボイド・ゲインズ
チューズー曹長 / アーレン・ディーン・スナイダー
アポンテ / ラモン・フランコ
日本公開: 1987年
製作国: アメリカ マルパソ・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
今回も、仕事に関してはヴェテランの風格が漂うが、人生そのものには不器用な中年男が、若者を育てる作品にしてみた。西部劇から戦争映画へとジャンルは変わるが、いかにもイーストウッドらしい武骨な作品。
アメリカ、ノースカロライナ朝鮮戦争からの古参兵であり、数々の武勲を立ててきたハイウェイ軍曹(クリント・イーストウッド)が、海兵隊基地に転任してきた。
しかし、戦場以外での彼はトラブル・メーカーであり、赴任直前も酔って喧嘩した挙句、パトカーに放尿して逮捕され留置所に入れられていたのだ。それでも、よほどの人間しか貰えない名誉勲章受勲のおかげで大目に見てもらえての出所であった。
彼が着任した基地では、実践経験がまったくない、「書類バカ」とあだ名されるパワーズ少佐(エヴァレット・マッギル)が、いきなり彼を目の敵にした。着任直前の軍曹の行為を知っては当然だろうが。しかも、若き兵士たちも、遊び半分のような連中で、当然、ハイウェイのことも、「爺さん」とバカにする始末。
そんな兵士の中に、赴任途中、彼をだまして詐欺行為をした、自称「ロックの帝王」のジョーンズ(マリオ・ヴァン・ピープルズ)が、いたことから・・・
戦時下でしか輝けない中年男の挫折と心意気を描く好編。
圧倒的な自信からくる、ふてぶてしさ。何度も死線を潜り抜けてきたからこその証左なのだろう。しかし、平時は真っ当な人間として社会生活を送れない人生の脱落者。別れた妻には未練たらたらだ。
良く言えば不器用。そんな主人公を温かく見守るのは、同じ戦場で苦楽を共にしてきた古い仲間。それ以外は、彼を完全な異端者と見ている。しかし、生死を分ける極限下では、圧倒的な実力を発揮しそうだ。
否や発揮してきたからこそ、数多くの受勲歴があるのだ。しかも彼の所属するのは、一番危険な任務に真っ先に動員される、タフな『海兵隊』である。その中でも群を抜く存在。
ストーリィは簡単だ。偉そうにしているが、どうせ盛りを過ぎたロートル。集められた新兵たちは、主人公をバカにするが、あっという間にねじ伏せされる。
それだけでなく、主人公は理論派で実践経験のない上官にも容赦ない。なぜなら、戦場では、ちょっとした油断や判断ミスのすべてが死に直結するからである。
いかにもイーストウッドが好みそうな題材。彼自身、ハリウッドでは芽がでず、マカロニ・ウエスタンで脚光を浴びハリウッドに凱旋した人物。
しかし、受けた恩義は忘れず、イタリアのセルジオ・レオーネとアメリカのドン・シーゲル両監督には、自分を拾ってくれ育ててくれたと表立って言うような男でもある。
他人に嫌われようが、自分の確固たる信念を持ち、表面上の繕いや、身勝手さを容赦しない男を演じ、自ら監督してきた。ほぼ、彼の作品には、それが一貫している。
本作も然り。要は、権力や財力でねじ伏せたり、他人を平気で犠牲にして生き残ろうとする人間に対して、ストレートに嫌悪感を示す。
訓練所での様子から、実戦へと流れる展開は、誰が見ても解りやすいし、思わずニヤリとする。
映画としての深さを描く技法よりも、ストレートさに重きを置く。ダレないようにメリハリをつけ、観ている人間が、想像している通りに進行して行く手法には、彼自身の思いが素直にこちらに入り込んでくる。
ある意味、昔気質の日本人が好きそうな作品であり、個人的にはツボにはまる好編である。