先週末、銀座に所要があり、ついでとばかり、新橋まで足を延ばして、飲みに廻った。行く店は決まっている。
途中、新橋駅の「SL広場」を横切った。テレビのインタビューで、サラリーマンの意見を聞くというと決まって登場する場所。当然、そこには蒸気機関車が設置してある。
すると、それが大きな白い天幕に覆われてメンテナンス状態になっていた。
その姿を見て、即座に思い出したのはイタリアである。もう20年以上も行ってないが、訪れる度、どこかの有名建造物が、常にメンテナンス状態であった。あれだけ歴史のある国だ、当然であろう。
しかも、あちらの化粧直しは長い。数年経って、同じ場所を訪れても、普請中。場所によっては、一度も、その容姿を直接見たことがないものもある。
流石に、現在では終了しているだろう。ならば、修復がなされた威容を眺めたいと、旅心が付いたが、イタリアまで足を延ばすのはもう無理だろう。
先月、イタリアに行った知人の話を尋いたが、やはり、円安と景気の所為で、すべてが割高で、帰国日は空港までの運賃にも事欠いたほどだと。やはり、イタリアは夢のまた夢だろう。
春の到来を忘れさせるほど冷え込んだ晩。イタリアから現実に戻り、お国柄の違いだろうか、見上げたSLのメンテナンスは意外と早いかもなと思いながら、飲み屋に向かった。
いつも混んでいる小さな店だが、珍しくガラガラであった。
実は、空いている店は大好きなのだが、考えると、閉店への加速度が付いていることでもある。まあ、空いているのは今日だけだろう。その後は、どうせ、ハシゴ酒。
半時ほどで、別な店に向かったが、何と、そこも開店休業状態。早々に切り上げ、また別な店に。またしても、そこもガラガラで、貸切。
ヒマな店は好きだが、そこまで全店が同一だと、こちらも複雑だ。40歳を超えた店主は、頼りになる従業員が来月いっぱいで辞めるので、誰かいないかと話を振って来た。
人望も人脈もない自分に尋いてくるとは。もし、自分一人になるとメニュー構成も再検討しないとなと、嫌なことを言う。
アジア系でも良いが、正社員雇用となると煩雑な処理なり申請が必要なのかと。こちらには、知る由もない。
春になれば、虫も土から出てくるし、桜も咲くことだし、何とかなるさと無責任な返答。
でもな、桜って、すぐに散るんだよな。イタリアも、潤った懐も、心持さえ、夢のまた夢か。