スタッフ
監督:ラルフ・トーマス
制作:ベティ・E・ボックス
脚本:アイアン・スチュワート・ブラック
撮影:アーネスト・スチュワード
音楽:アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ
キャスト
マクガイア / ダーク・ボガード
ハジオス / ジョージ・チャキリス
ジュノー / スーザン・ストラスバーグ
ベイカー / デンホルム・エリオット
スカイロス / グレゴワール・アスラン
エミール / コリン・キャンベル
アンドロス博士 / ジョセフ・フェルスト
パーク中佐 / ナイジェル・ストック
アンドロス夫人 / キャサリン・カース
日本公開: 1967年
製作国: イギリス ボックス&トーマス・プロ作品
配給: 大映洋画部
あらすじとコメント
ダーク・ボガードが軍人役を演じ、異国の地で繰り広げられる恋愛絡みのアクション・ドラマ。前回の「風は知らない」(1958)と同じラルフ・トーマス監督とのコンビ作。
東地中海上の島キプロス。イギリス統治下の1957年のこと。独立運動が激化し、ゲリラ活動が頻繁に起きていた。
駐留するイギリス陸軍情報部のマクガイア少佐(ダーク・ボガード)は、治安維持のために奔走する日々で、息抜きは考古学調査のために来ていたアメリカ人女子大生ジュノー(スーザン・ストラスバーグ)に会うこと程度だ。
今日も簡単なあいさつを交わした後、別れた彼女は滞在先のアンドロス博士の家に戻った。しかし、すぐに近くでイギリス軍の車両がゲリラの攻撃を受け、崖下に転落炎上する現場を見てしまう。慌てて駆け付けると瀕死の兵士から、襲撃犯を見た、まるで、絵画のように端正な二枚目だった、と告げられた。すぐにマクガイアが駆け付けて来たが、彼女は茫然自失状態。その場にはアンドロス博士もいたが、どうも、博士は非協力的であった。
翌日、博士宅にはいつもと違う空気が流れ、夜になると端正な顔立ちの青年ハジオス(ジョージ・チャキリス)が邸を訪れて来た・・・
独立運動に巻き込まれるアメリカ人女子大生を通して描くアクション作。
図らずも、滞在先がゲリラ組織の幹部である博士の家だった女子大生。激化する独立運動を沈静化しようと躍起になっているイギリス軍少佐。そして、過激な青年テロリスト。
冒頭から、この三名のスタンスが紹介され、以後の展開をこちらに想起させる進行である。
どうやら博士が重要人物に違いないと特定したイギリス側は、女子大生から情報を得ようと接触を試みる。当然、そこには主人公である少佐個人の私情も入り込んでいる。
しかし、彼女は何ら語ろうとはしないのだが、主人公と頻繁に会う姿が目撃され、彼女を始末しようと言いだす青年テロリスト。
解りやすい展開と進行で、サスペンスとアクションが入り混じるのは、イギリス映画のお家芸である。
ただし、腕の良い監督は次々に渡米し、イギリス映画界が落陽し始まっていた時期でもある。
そんな中、本作の監督であるラルフ・トーマスは、ずっとイギリスに残って映画製作を続けた御仁。
アクションをメインに、恋愛モノやコメディと活躍したが、どうにも凡庸な作品ばかりという印象が強い監督でもある。
本作もバランスとペース配分に気を遣い、さりげない職人芸を感じさせはするのだが、やはり、どこか散漫な印象が拭えない。
日本公開当時は、助演のジョージ・チャキリスが大人気で、多少、話題になったようだが、全く印象にない。
というよりも、「ウエストサイド物語」(1961)で有名になったものの、以後のミュージカル以外の作品群には、決して恵まれているとは思えない俳優である。
本作も独特で端正な顔立ちから、キプロス人という起用なのだろうが、演技が上手いと感じさせないのが残念。
ただ、イギリス映画の脇役として、何度も顔を見かける、「レイダース」シリーズでハリソン・フォードの友人役が印象に強いデンホルム・エリオットや、「大脱走」(1963)で、捕虜側の合唱隊を指揮する役のナイジェル・ストックといった、自分には好印象の役者が登場してくるので、彼らの活躍場面は微笑んだが。
絶頂期のイギリスの冒険スリラーと比べるとどうしても見劣りがするが、それでも、ノンビリさが先行するものの、一応、メリハリのついた作劇で、それなりに見せてくれる作品ではある。