スタッフ
監督:アーウィン・アレン
制作:アーウィン・アレン
脚本:ネルソン・ギディング
撮影:ジョー・ヴィロック
音楽:ジェリー・フィールディング
キャスト
ターナー船長 / マイケル・ケイン
ステファン / テリー・サヴァラス
ハバート / カール・マルデン
セレステ / サリー・フィールド
マゼッティ / ピーター・ボイル
メレディス / ジャック・ウォーデン
ハンナ / シャーリー・ナイト
ホプキンス / スリム・ピケンズ
テレサ / アンジェラ・カートライト
日本公開: 1979年
製作国: アメリカ ワーナー作品
配給: ワーナー・ブラザース
あらすじとコメント
前回の「10億ドルの頭脳」(1967)で共演したマイケル・ケインとカール・マルデン。そんな二人が再び共演した有名パニック映画の続編で、監督は第1作では製作のみであったアーウィン・アレンが兼務した。そこそこのオール・スター・キャストだが、出来栄えは、これがまた困った作品なのだ。
地中海洋上。大晦日に転覆したポセイドン号から数名の乗客が救出された直後。
近海にいたターナー船長(マイケル・ケイン)とハバード(カール・マルデン)、若きセレステ(サリー・フィールド)が乗るタグボートが急行してきた。仕事が上手く行かず、船を取り上げられそうなターナーは、船内にある貨物や持ち主をなくした金品を回収しようと提案した。良心の呵責や、船体の不安定さからハバートらは躊躇するが、強引に説得し、救助隊が開けた穴から入ろうとした時、別な船がやって来た。
それにはステファン(テリー・サヴァラス)らが乗船していた。彼は、自らを医師だと名乗り、多分、まだ生き残っている乗客らがいるはずだから、救出に駆け付けたと。渋々、合流して船内に入る一行。
しかし、彼らが入船した直後、脱出口であるシャフト部が爆発で塞がれてしまい、帰りは別な出口を探さなくてはいけなくなるターナーたち。
彼らは先ず、体育室に入った。すると、隣接する部屋から数名の叫び声が聞こえた・・・
人間のエゴが織りなす行動をメインに進行する、妙に、こじんまりとしたパニック映画。
沈没寸前の豪華客船から、新年のお年玉とばかりに金品を奪おうとする主人公。また、生存者を救出に来たと名乗る医師軍団も、どこか怪しげだ。
彼らが入船するとすぐに脱出口が塞がれる。何とも、出来過ぎな滑りだしだ。
ここまでは前作とまったく同じセットで、見慣れた船内が拡がるが、それだけでは面白くないとばかりに、今度は上下が逆さまになった体育室と来る展開。
そこから、当然、何人もの生存者が登場してくる。
これがまた、エゴの塊のような、娘とはぐれたバーの経営者、初乗船で船内はまったく不案内の船付の看護師、謎の美人、テキサスの石油王だと名乗る酔っ払い、年配の夫婦ながら亭主は盲目。その他にも数名。
医師団は、他の場所で生存者を捜すと、さっさと別行動を取り、主人公たちも、落下のショックで偶然開いた金庫から、いとも簡単に金品を拝借。
何とも素晴らしい御都合主義全開で進行する。
となると主人公グループは、新たな脱出口を探そうと、前作同様、船内をフラフラと歩きまわるという展開。いやはや、新味もなく、ダルいというか、実にユルい展開なのだ。
確かに、セットなど、新たに組み直して、それなりに金は掛かってますと感じるが、どうにも脚本と演出のメリハリというか、キレがまったくない。
医師団らが本性を露わにし、主人公グループの命が危なくなると、偶然、船内で小爆発が起こり、窮地を脱する。しかし、何とも、運良く小爆発を繰り返す客船である。だが、それこそ、近いうちに沈没すると想起させる。
俳優陣も、そこそこの有名人が登場してくるが、中でもテキサス一の石油王を名乗るスリム・ピケンズが印象的。
前作同様、この手のパニック映画では、一応のオールスターの中で、誰が助かり、誰が死ぬのかという興味もあるのだが、そもそも金品目的で入る人間らがメインのキャストであり、脇を占めるのは、訳も解らぬまま上下ひっくり返った船内で運良く生き残った乗客たちだ。
一作目のジーン・ハックマンように、他人のために犠牲的精神を発揮し、ストーリィを盛り上げる役もなく、一々、メリハリに欠ける。
何とかアクション・シーンを入れたかったらしく、何故か手榴弾やマシンガンによる銃撃戦まで出て来て派手さをだそうとは試みてはいる。
だが、それらが成功しているとは、到底思えない。
自分が最初に聞いた続編のアイディアは、前作で生き残った乗客らを船から運ぶヘリコプターの操縦士が、何と脱出が叶わなかったジーン・ハックマン扮する双子の兄弟で、転覆責任が船会社にあると証言されるのを隠ぺいするため、スイスで行われる裁判に出廷させまいと、かの生存者たちを殺すべくトンネルで列車転覆を計るというものだった。
でも、それって「カサンドラ・クロス」(1976)と同じではないか。さて、だとすると、本作とどちらがマシだったのか。
結論は簡単。佳作の続編など、考えないほうが良いということだろう。