ケイン号の叛乱 – THE CAINE MUTINY(1954年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:エドワード・ドミトリク
制作:スタンリー・クレーマー
脚本:スタンリー・ロバーツ
撮影:フランツ・プラナー
音楽:マックス・スタイナー

キャスト
クィーグ中佐 / ハンフリー・ボガート
マリク大尉 / ヴァン・ジョンソン
グリーンウォルド中尉 / ホセ・ファラー
キーファー大尉 / フレッド・マクマレイ
キース少尉 / ロバート・フランシス
メイ / メイ・ウィン
デヴリース中佐 / トム・チューリー
ミートボール / リー・マーヴィン
チャリー中佐 / E・G・マーシャル

日本公開: 1954年
製作国: アメリカ コロンビア作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

前回は、精神異常を滲ませる軍艦の艦長が主役の映画だった。今回も同じ。時には、そんな相手に対し、乗組員側から反乱が起きることもあり、それをモチーフにした数多くの作品がある。本作も然り。ただし、法廷劇がメインという異色作。

アメリカ 真珠湾第二次大戦下の1943年、海軍士官学校を卒業したばかりのキース少尉(ロバート・フランシス)は、老朽掃海艇ケイン号に配属された。

乗船すると、乗組員たちは怠惰で、戦時下とは思えぬほどであった。すぐに真面目そうな副官マリク大尉(バン・ジョンソン)や、小説家希望で皮肉家の通信長キーファー大尉(フレッド・マクマレイ)らが、少尉を迎えた。思っていた『海軍』と違う雰囲気に戸惑うキースだが、それらは温厚な艦長の影響だとすぐに察知した。

訓練航海でも乗組員による失態が相次ぎ、都度、副官のマリク大尉がフォローしなければいけなかった。そんな影響からか、キースまでミスを犯してしまう。

さすがに艦長に呼びだされるが、人間は多少のミスは犯すものですと自己弁護する始末。だが、キースのミスが決定打となったからか、艦長は更迭されてしまう。

そして、新艦長として着任してきたのがヴェテラン海軍軍人のクィーグ中佐(ハンフリー・ボガート)だったことから・・・

戦時下という状況が、海に生きる男らにどう作用するかを描く異色ドラマの佳作。

だらけきった艦船に赴任する新艦長。当然、規律回復に勤しむのだが、それがどうにも危うさを漂わす。歴戦の勇士であるから、間違った判断などしないだろうと誰もが思うのだが、どうにも雰囲気が奇妙。

しかし、艦船では艦長が絶対的存在であり、それに楯突く者は「反逆者」なのである。しかも、艦長が精神的に脆弱であると立証することは不可能。

なぜなら、艦長は弁も立つからである。

新艦長の異常性に最初に気付くのが小説家志望で、やはり弁の立つ通信長。副官とは親友であるが、あくまで命令遵守の彼は、通信長の言葉に惑わされながらも、軍規を優先する男だ。

そして、上流階級の母に溺愛され、クラブ歌手の恋人との関係に逡巡する新任将校。若気の至りというか、ボンボンゆえか、世間を知らないくせに自己弁護するタイプ。

新艦長をメインに、他に将校三名が本作の主軸を担う展開。

誰もが性格に多少の差こそあれ、どこか精神的的に病んでいたり、未熟だったり。

だが、やはり一番の問題は艦長である。

興味深いのは、その艦長をハンフリー・ボガートが演じていること。凶悪な犯罪者からロマンティスト役まで、様々な映画に出演しているので、確かに適役かもしれぬが、それでも、本作での設定は、異色さを際立たせている。

偏執症を匂わせ、神経が昂ぶると、急に情緒不安定になったり、ピンポン玉にも満たない小さな鉄球二つを嫌な音を立てながら、いじり回すという、いびつさ。

だが、そんな彼の演技はラストになって効いてくるので、思わず膝を叩いた。

映画の三分の二は、登場人物たちの性格説明的に進行し、艦長に対してのイライラが極限状態になっていく様を追うのだが、本作の白眉は後半30分で描かれる軍事法廷シーンである。

そこで艦長に対し、反乱を起こした側の弁護士を勤めるホセ・ファーラーが全部を引っ攫っていく名演を見せるのだが、非常に複雑な心情に追い込まれるは、艦長だけでなく、見ているこちらも同様なのだ。

素直に艦長が悪役として見てきた自分らに冷や水を浴びせるエドワード・ドミトリク演出に目を瞠った。

主役であるボガート以外にも、悪役が存在し、人間誰もが持つ脆弱さを浮かび上がらせる。

芸達者な脇役らの名演もあり、見応えのあるドラマに仕上がっている佳作。

余談雑談 2015年8月15日
お盆休みモードである。報道でも、判で押したようにUターン渋滞の情報が流れている。 こちらは実家も自室も徒歩圏内での人生なので、実感が湧かぬが、さぞ大変なのだろうと推察している。というよりも、地方に親類や土地を持たぬので、いざというときは逃げ